大谷翔平のドジャース移籍に「落胆の声」はなし ヤンキースが本腰を入れなかった事情にファンも納得のわけ (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke

【大谷がヤンキースに移籍していたら......】

「大谷は"ニューヨーク・ストーリー"ではないようだ。真実かはわからないが、翔平はニューヨークを望んでいないという見方が依然としてある。彼自身が言ったわけではないが、そう推測している人たちがいる」

 情報通として知られる、地元メディア「SNY」のアンディ・マルティノ記者はそう指摘していたが、 「大谷は東海岸には興味はない」という現場の通説が真実だったかどうかはわからない。ともあれ、これはあくまで個人的な思いだと断っておきたいが、少し残念な気持ちも残る。ニューヨークで20年以上を過ごしてきた人間として、「アメリカで本当にベースボールが熱いのはやはり東海岸だ」という思いがあるからだ。

 今年、ア・リーグ東地区の5チーム中4チームが勝率5割以上だったことが示す通り、プレーレベルの高さ、競争の激しさもお墨つき(プレーオフではどのチームも振るわなかったが、それはよくあることだ)。特に"ベーブ・ルースの建てた家"と称されるヤンキースタジアムで、"現代のベーブ・ルース"がプレーしていたらどれだけ壮観だったか。

 大谷がピンストライプに袖を通せば、ブロードウェイのビルボードに恒常的にポートレートが掲げられただろう。ニューヨークの看板になることで、大谷は野球界の範疇を超え、アメリカでも正真正銘のメガスターになっていたはずである。
 
「ジョージ・スタインブレナー(故人・元オーナー)は、世界最高の選手たちはヤンキースでプレーすべきだと常に考えていた」

 WM終了後、ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMが残したそんな言葉も大谷に投影できる。より厳しく、それゆえ成功時には得られるものも大きい大都市で、"球界の顔"がプレーすることの意味と楽しさは計り知れないものがあったように思えるのだ。

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