大谷翔平「真夏のトレード」をシミュレーション 残留でオフにFA争奪戦? 移籍してエンゼルスに出戻り? (3ページ目)
【ナ・リーグ移籍でも本塁打王?】
移籍を経てFAになってからの大谷の動きは、トレードで移籍せずにエンゼルスからのQOを断ったあとと同じだ。移籍先の球団、エンゼルス、それ以外の球団、いずれとも交渉できる。
夏のトレードで放出され、オフにその球団に戻った例としては、アロルディス・チャップマン(現テキサス・レンジャーズ)が記憶に新しい。
2016年の夏、低迷していたヤンキースはFA直前のチャップマンをシカゴ・カブスへ放出し、グレイバー・トーレスら4人を獲得した。その秋にカブスでワールドシリーズ優勝メンバーとなったチャップマンは、オフに5年8600万ドル(2017年〜2021年/年平均1720万ドル)の契約でヤンキースへ戻った。
なお、大谷がトレードで移籍しなかった場合と移籍した場合を比べると、ポストシーズン初出場の可能性は後者のほうが高まりそうだ。現時点のエンゼルスは、ポストシーズン進出圏外にいる。ポストシーズンまでエンゼルスより遠い位置の球団が、大谷を獲得しようとするとは考えにくい。
大谷を入手すれば、投打とも大きなプラスになるとはいえ、保有できるのはFAまでの数カ月にすぎない。"レンタル・プレーヤー"である大谷の見返りに、エンゼルスが求めるであろうプロスペクト(若手有望株)を手放すのは、かなりのリスクを伴う。
なお、ア・リーグのエンゼルスからナ・リーグの球団に移籍すると、大谷がタイトルを獲得する可能性は低くなる。各リーグで記録したスタッツによりタイトル・ホルダーは決まるからだ。
もっとも、仮にナ・リーグの球団に移ったとしても、移籍までのホームランの本数がシーズン終了の時点でもア・リーグ最多のままなら、大谷はナ・リーグの球団にいながらア・リーグの本塁打王となる。さらに、移籍前のパフォーマンスだけでア・リーグのMVPを受賞することも、あり得なくはなさそうだ。
著者プロフィール
宇根夏樹 (うね・なつき)
ベースボール・ライター。1968年生まれ。三重県出身。MLB専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランス。著書『MLB人類学──名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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