澤村拓一のメジャー1年目に上原浩治も「100点満点」。苦境を「変わっていく勇気」で乗り越えた
「悔しいです。チームとして負けてしまって、次に進めなかった。終わったばかりなので、(今シーズンの)総括はまだできないです......」
現地時間10月22日、敵地ヒューストンのミニッツメイド・パークのクラブハウス前の通路で、今季の戦いを終えたボストン・レッドソックスの澤村拓一はいつになく小さな声でそう言葉を絞り出した
メジャー1年目でプレーオフにも登板したレッドソックスの澤村この記事に関連する写真を見る 不完全燃焼という思いがあったのだろう。2勝1敗とリードした時点ではワールドシリーズ進出が視界に入ったとも思えたレッドソックスだが、第4戦以降、ヒューストン・アストロズに思いもよらぬ3連敗。背水の陣で臨んだ22日の第6戦では背番号19の出番はなく、チームも0−5で完敗した。騒がしいことで有名な、ヒューストンの42.718人のファンの地鳴りのような大歓声に晒されながら、澤村は敵地のブルペンで2021年の終戦を迎えた。
メジャーでのデビューシーズンは長い1年になった。最後になった試合後、ショックが残った状態でシーズンを振り返ることを避けた"エモーショナル"な右腕の脳裏には、さまざまな思いが去来していたはずだ。
手続きの問題で春季キャンプへの合流が遅れ、当初は日本とは違うメジャーのマウンド、ボールの適応などにも苦しんだ。新天地にもようやく慣れた7月には右上腕を痛めて負傷者リスト入りし、9月には新型コロナウイルスに感染して離脱。多くのアクシデントに見舞われながら、それでもレギュラーシーズンではチーム4位の55試合に登板し、ワイルドカードでプレーオフに進んだチームの一員として5勝1敗、防御率3.06という好成績を残した。
90マイル後半の速球と、同マイル前半のスプリットのコンビネーションはメジャーでも通用した。打ち気にはやる打者が多いアメリカの野球に、細かい制球力よりも球威で勝負する澤村はフィットした印象がある。
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