地区優勝争いで浮き彫りとなった新メジャーリーグ勢力図
いよいよレギュラーシーズンも大詰めとなってきましたが、今シーズンの地区優勝争いは、例年とは少し状況が違います。というのも、ニューヨークやシカゴといった大都市を本拠地とするチームが軒並み低迷し、プレイオフ進出を逃してしまったからです。その一方、これまで目立たなかった都市にフランチャイズを置くチームが勢力を伸ばしてきました。つまり今年は、新たなに勢力図が書き換えられたシーズンと言えるでしょう。そこで今回は、地区ごとに勢力図の変化を紹介したいと思います。
好調ドジャースを牽引するエースのクレイトン・カーショウ まず今シーズン、最も驚くべき地区優勝争いを演じたのは、東地区でしょう。紹介したいのは、ア・リーグのボルチモア・オリオールズ(92勝60敗)と、ナ・リーグのワシントン・ナショナルズ(87勝64敗)です。9月16日、オリオールズは2位タイのニューヨーク・ヤンキースとトロント・ブルージェイズ(ともに77勝74敗)に14.5ゲーム差、一方のナショナルズは2位のアトランタ・ブレーブス(76勝76敗)に11.5ゲーム差という大差をつけて、同じ日に地区優勝を果たしました。
興味深いのは、この2チームが本拠地とするワシントンD.C.とボルチモアが、わずか63キロの距離にあることです。このように近隣に位置するため、首都ワシントンを中心に取り巻く環状道路「ベルトウェイ」にちなんで、両チームの対戦は「ベルトウェイシリーズ」と呼ばれています。
両チームのフランチャイズの過去を振り返ると、1901年にさかのぼります。まず、ア・リーグ創設と同時に初代ワシントン・セネタースが誕生しました。その後、1954年にセントルイス・ブラウンズが東海岸に移転し、ボルチモア・オリオールズが誕生。しかし、1961年のエクスパンション(球団拡張)で初代セネタースはミネソタに移転して、現在のツインズとなりました。同年、2代目セネタースが創設されたものの、1960年代後半からオリオールズの黄金時代が到来。名将アール・ウィーバー(1996年野球殿堂入り)や、ブルックス・ロビンソン(1964年ア・リーグMVP)などのスター軍団によって人気を博したため、近隣のセネタースは集客が伸び悩み、1972年にテキサスへ移転して現在のレンジャーズとなりました。つまり、首都ワシントンとボルチモアにチームが同時に存続するのは難しかったのです。
1 / 3
著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)