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地区優勝争いで浮き彫りとなった新メジャーリーグ勢力図 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 近年、メジャーリーグの主役は、東海岸から西海岸へと移行してきたと思います。エンゼルスは2003年、ヒスパニック系の実業家アルトゥーロ・モレノがオーナーに就任して以降、大規模な戦力補強を行ない、5度の地区優勝(2004年・2005年・2007年~2009年)を果たしました。そして2011年オフには、アルバート・プホルス(※)やC・J・ウィルソン(※)といったビッグネームを獲得。さらに、ジェレッド・ウィーバー(※)やマイク・トラウト(※)といった生え抜きもブレイクし、屈指の強豪チームとなったのです。近年は勝ち星に恵まれませんでしたが、今シーズンは5年ぶりの地区優勝が近づいてきました。現在、2位のオークランド・アスレチックス(83勝68敗)を11.5ゲーム差まで引き離し、首位を独走しています。

※アルバート・プホルス=2001年のメジャーデビューから10年連続「3割・30本塁打・100打点」を成し遂げた右のスラッガー。
※C.J.ウィルソン=2010年~2013年の4年間で通算61勝を挙げている先発左腕。
※ジェレッド・ウィーバー=2010年に最多奪三振、2012年に20勝をマークして最多勝に輝いた先発右腕。
※マイク・トラウト=2012年に史上最年少で「トリプルスリー(打率3割・30本塁打・30盗塁)」を達成した23歳外野手。

 対するドジャースも、2012年に新オーナーグループによって買収されると、まさに「大人買い」のような札束攻勢で大型補強を慣行しました。そして2014年、ついにドジャースは名門ヤンキースを抜き、メジャートップのチーム年俸総額(約2億3500万ドル/約240億円)に躍り出たのです。その投資は功を奏し、現在ドジャースは2位のサンフランシスコ・ジャイアンツ(84勝68敗)と2ゲーム差の首位。永遠のライバルであるジャイアンツを後ろに従え、2年連続地区優勝へと邁進しています。

 ただ、西地区の面白いところは、サンフランシスコ湾を挟んだア・リーグのアスレチックスとナ・リーグのジャイアンツも強いという点です。アスレチックスの本拠地オー・ドットコー・コロシアムと、ジャイアンツの本拠地AT&Tパークは、直線距離で結ぶとわずか17キロしか離れていません。これは、メジャー30球団で最も近い距離です。

 もともと、サンフランシスコ湾を挟んだ両チームのスタジアムは、特有の気候でよく霧が発生し、夏場でも夜になると震えるような寒さの日もあり、とにかく集客しづらい環境でした。しかし、近年は2チームとも調子が良く、一時は西地区の首位に立つほど躍進し、おかげでスタジアムは満席に近い状態です。今、メジャーリーグの実力を支えているのは、西海岸の4チーム(エンゼルス、ドジャース、アスレチックス、ジャイアンツ)と言っても過言ではありません。

 さらに今シーズンは、シアトル・マリナーズ(81勝70敗)も絶好調です。ア・リーグ東地区2位のアスレチックスを2ゲーム差で追いかけており、ワイルドカード入りする可能性も残されています。西地区から5チームもプレイオフに出場するようなことは、滅多にないでしょう。

 東地区は首都圏、中地区はミズーリ州、そして西地区は海岸線と、今シーズンのメジャーリーグは局地的に盛り上がっています。非常に珍しい現象だと思いますので、どのチームがこの例年にないシーズンを制するのか、ぜひ最後まで楽しんでください。

※成績は9月17日現在

著者プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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