2014.09.14

岩隈久志の独特のリズム感を作ったある捕手の存在

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エースの響き~ブルペン捕手・中谷仁が見た「超一流の流儀」
岩隈久志(2)

 中谷仁です。私は今、子どもたちに野球を教えながら、自分自身も勉強の日々を送っています。私は選手、ブルペン捕手として16年間プロの世界に身を置いてきました。阪神、楽天、巨人、さらには2013年のWBCで数多くの超一流と呼ばれるエースたちの球を受け、彼らの凄さを知ることができました。これまで私が彼らと過ごした貴重な時間を振り返り、彼らの人間性、能力の高さに迫りたいと思います。前回に続き、メジャーで2年連続2ケタ勝利を挙げたシアトル・マリナーズの岩隈久志についてお話しさせていただきます。
(前回の記事はこちら)

今やマリナーズにとって欠かすことのできない存在となった岩隈久志

 メジャーに行っても、日本の時と同じように活躍しているクマ(岩隈)。ピッチングのレベルの高さは当然ですが、もうひとつ彼の特長として挙げられるのがテンポの良さです。クマが持つ独特のリズム感が、メジャーの打者を困惑させていると思うのです。そのクマの独特のリズム感を生んだのが、あるひとりの捕手でした。それは残念ながら私ではなく、藤井彰人さん(現・阪神)です。

 キャッチャーにはいろいろなタイプの人がいます。「オレのリードについて来い」とリーダーシップを取る人。大きなアクションでピッチャーを盛り上げる人。打者の動きに目を光らせ、冷静なリードでピッチャーを引っ張る人。そしてクマ(岩隈)とバッテリーを組んでいた藤井さんは、ピッチャーのリズムを最優先し、決して主張しないタイプでした。

 たとえば、厳しいコースをボールと判定された時、ミットを動かさず「今のボール?」という態度は絶対に取らない。ボールと判定されても、「大丈夫。お前だったら、絶対に打ち取れる」という感じで、すぐにピッチャーに返球します。

 楽天時代、野村克也監督(当時)から、「ピッチャーがあれだけ一生懸命投げているんだから、それに対してリアクションしてやれ!」ってよく言われました。なので、何もリアクションせずピッチャーに返す藤井さんを見て、「その1球にこだわりはないのか」と、野村監督が厳しく言うこともありました。でも藤井さんは、ピッチャーを信じ、リズムを作ることを最優先していました。それに藤井さんはキャッチングがうまく、スローイングもいい。おまけにワンバウンドの球は絶対うしろにそらさない。「オレは裏方。お前が気持ちよく投げられればいい」というキャッチャーでした。