メジャーリーグのトレード期限終了。今季の勝ち組は? (3ページ目)
このふたりを補強したことで、カージナルスの先発陣は世界一を狙えるぐらいの戦力になったのではないでしょうか。今シーズンのカージナルスは、マイケル・ワカとハイメ・ガルシアという優秀な先発投手を故障で欠き、苦しい状況に追い込まれていました。特に昨年のリーグチャンピオンシップシリーズでMVPに輝いたワカの離脱は大きな痛手です。
昨年ワールドシリーズでレッドソックスに敗れた要因は、先発陣の経験の差だったと思います。エースのアダム・ウェインライト以外は、若手が先発ローテーションの多くを占めていました。しかし、ベテランふたりを加えたこの陣営なら、ポストシーズンを不安なく戦えることでしょう。その中でもラッキーは、アナハイム(現ロサンゼルス)・エンゼルス時代にチーム初の世界一に大きく貢献し、昨年もワールドシリーズ最終戦で先発して勝ち星を挙げた経験豊富な投手です。ラッキーの存在は世界一を狙うチームにとって非常に大きいと思います。
その他に今回のフラッグシップディールで成功したチームを挙げるならば、ア・リーグ東地区4位のタンパベイ・レイズと、ア・リーグ西地区3位のシアトル・マリナーズも入るのではないでしょうか。レイズはプライスを放出しましたが、決してプレイオフ進出をあきらめていないと思います。タイガースから即戦力のドリュー・スマイリー(6勝10敗・防御率3.98)という25歳の左腕と、マリナーズからニック・フランクリン(打率.128・0本塁打・2打点)という将来有望な23歳の内野手を獲得しました。将来を見越しつつ、今季の巻き返しも狙っていると思います。
一方、タイガースからオースティン・ジャクソン(打率.270・4本塁打・34打点)という右打ちの外野手を獲得したマリナーズも、今回のフラッグシップディールの勝ち組でしょう。マリナーズは現在、メジャートップの防御率3.07をマークしているのですが、その一方で打線は相変わらず低迷しています。7月の1試合平均得点は2.81で、今季から加入したロビンソン・カノひとりが奮闘している状況です。ジャクソンは俊足かつパワーもあるので、1番・センターとして期待されています。ロイド・マクレンドン監督がかつてタイガースでバッティングコーチをしていたときの愛弟子なので、新天地で大いに暴れまわりそうな予感がします。
レギュラーシーズンも残り2ヶ月を切り、さらに地区優勝争い、そしてプレイオフ進出への戦いが激化することでしょう。これら移籍した選手がどんな活躍を見せるのか、目が離せません。
著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)
3 / 3