メジャーリーグのトレード期限終了。今季の勝ち組は?
現地7月31日にメジャーリーグはウェーバー公示なしでトレードできる最終日を迎え、いわゆる「トレード期限」が終了しました。おそらく今回は、メジャーリーグ史上に残るフラッグシップディール(※)だったのではないでしょうか。その最大の驚きというのは、デトロイト・タイガースとオークランド・アスレチックスを中心に行なわれた「ビッグサプライズ」のトレード劇です。
※フラッグシップディール=地区優勝やプレイオフ進出を狙う上位チームが下位球団の主力選手をトレード期限ぎりぎりに獲得すること。
デトロイト・タイガースの一員となったデビッド・プライス まずタイガースは、2012年にサイ・ヤング賞を受賞したデビッド・プライス(11勝8敗・防御率3.11)をタンパベイ・レイズから獲得。そしてアスレチックスは、昨年ワールドチャンピオンに輝いたボストン・レッドソックスのエース、ジョン・レスター(11勝7敗・防御率2.59)をトレードで手に入れたのです。これほどの大物がトレード期限の最終日に動くとは、まったく予想していませんでした。現地アメリカでは、新しく書き換えられたメジャーの勢力図についての話題で持ちきりです。
※カッコ内の数字は現地8月5日での今季成績
現在、ア・リーグ中地区で首位を走るタイガースは、すでにふたりのサイ・ヤング賞投手を擁しています。2011年受賞のジャスティン・バーランダー(10勝9敗・防御率4.66)と、2013年受賞のマックス・シャーザー(13勝4敗・防御率3.24)です。そこに2012年受賞のプライスが加わったことで、3年連続サイ・ヤング賞受賞者の超強力3本柱が完成しました。ひとつのチームに3人のサイ・ヤング賞投手が在籍するのは、メジャー史上15チーム目とのこと。最近では、2009年のサンフランシスコ・ジャイアンツ(ランディ・ジョンソン/1995年・1999年~2002年、バリー・ジート/2002年、ティム・リンスカム/2008年・2009年)の例があります。
今回のプライス獲得の背景には、タイガースのGMデーブ・ドンブロウスキーの綿密な計算が見て取れます。というのも、タイガースにとって一番の悩みは、近年精彩を欠いているバーランダーの存在なのです。2011年に投手三冠(最優秀防御率、最多勝利、最多奪三振)に輝いたものの、年々ストレートの球速が落ち、いまやエースの座をシャーザーに奪われてしまいました。しかも今オフ、シャーザーはFA権を取得するため、他球団への移籍が噂されています。そのあたりを見越して、タイガースは28歳と比較的若いプライスを獲得したのでしょう(バーランダー=31歳、シャーザー=30歳)。
ともあれ今シーズン、タイガースが世界一になるために一番必要なのは、プライスのような豪腕投手です。タイガースの先発陣は、いずれも三振を多く奪う豪腕タイプ。昨年もバーランダー、シャーザー、そしてアニバル・サンチェス(8勝5敗・防御率3.37)がシーズン200奪三振以上を記録しました。
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プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)