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メジャーリーグのトレード期限終了。今季の勝ち組は? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 そんな豪腕ぞろいの先発陣にプライスを加えたことで、特にプレイオフの短期決戦においては大きな強みになると思います。1990年代にアトランタ・ブレーブスがグレッグ・マダックス、トム・グラビン、ジョン・スモルツという先発3本柱を擁して黄金時代を築きましたが、スモルツ以外は技巧派タイプ。14年連続して地区優勝を遂げるも、ワールドチャンピオンは1度しか手にできませんでした。やはり、大一番で相手を圧倒できるのは、豪腕タイプのピッチャーなのです。そういう意味でも、タイガースの顔ぶれは世界一奪還に理想的と言えるでしょう。

 一方、現在ア・リーグ西地区1位のアスレチックスは、7月上旬にシカゴ・カブスからジェフ・サマージャとジェイソン・ハメルというベテラン投手をトレードで獲得していました。しかし、トレード期限最終日の7月31日に、アスレチックスはア・リーグ2位のチーム防御率(3.16)を誇るにもかかわらず、さらにレスターというエース級の先発投手を加えたのです。このトレードには、さすがに驚きました。

 ただ、これらのトレードを良く見てみると、獲得の意図は異なっていると思います。サマージャとハミルを獲得した狙いは、シーズン前半に活躍した若手先発陣を休ませながら地区優勝するため。対するレスター獲得は、ワールドチャンピオンになるための補強です。レスターのポストシーズンの成績を見てみると、その理由が良く分かります。ポストシーズン通算11試合に先発登板しているレスターの成績は、6勝4敗・防御率1.97。さらにワールドシリーズにいたっては、3試合の先発で3勝0敗・防御率0.43という驚異的な数字を残しています。レッドソックス時代に2度(2007年・2013年)、チームを世界一に導いた経験は、きっとアスレチックスの大きな武器となるでしょう。

 アスレチックスはレスターを獲得する代わりに、外野手のヨエニス・セスペデス(打率.259・17本塁打・67打点)をレッドソックスに放出しました。強打を誇るスラッガーでしたが、マネーボールに適していない選手でもあったのです。早打ちで、フォアボールをあまり選ばず、出塁率は高くありませんでした。今回のトレード期限で、アスレチックスはレッドソックスからジョニー・ゴームス(打率.239・6本塁打・34打点)という右のパワーヒッターと、ツインズからサム・ファルド(打率.262・2本塁打・21打点)という出塁率の高い選手を獲得しました。セスペデス放出で空いたレフトのポジションに、このふたりをプラトーンで起用するつもりなのでしょう。これらのトレードでも、ビリー・ビーンGMは抜け目ない敏腕ぶりを発揮したと思います。

 今回のフラッグシップディールでのビッグサプライズは、ア・リーグが中心でした。ただ、ナ・リーグでも面白い動きがありました。それは、ナ・リーグ中地区2位のセントルイス・カージナルスです。まず、7月30日にクリーブランド・インディアンスからオールスター投手のジャスティン・マスターソン(5勝6敗・防御率5.63)を獲得し、さらに翌日の7月31日には、今季を含めて過去12年間で11度のふたケタ勝利を挙げているジョン・ラッキー(12勝7敗・防御率3.55)をレッドソックスから手に入れたのです。

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