外野手豊富なヤンキースがイチローを絶対に手放さない理由 (3ページ目)
また、レギュラー候補と言われている3人を語る上で、ケガの問題も外すわけにはいかないでしょう。エルズベリーは2010年に肋骨を骨折して3回故障者リストに入り、その年はわずか18試合しかプレイできず、2012年も74試合の出場に止まりました。また、ベルトランもひざの故障により、ニューヨーク・メッツ時代は2009年=81試合、2010年=64試合と、十分に活躍できていません。そしてガードナーも、2012年に右ひじの故障で16試合と出場機会が激減。3人とも近年、シーズンを通して活躍できなかった過去があるのです。しかしイチロー選手は、メジャー13年間でケガによる欠場は皆無。過去12シーズンで150試合以上に出場しています。長期欠場するリスクの高い3人のことを考えれば、イチロー選手は必要不可欠と言えるでしょう。
近年のヤンキースは、実績のあるベテランをベンチに置く傾向が強くなってきました。2004年にはクリーブランド・インディアンス時代に5年連続盗塁王に輝いたゴールドグラブ賞4回のケニー・ロフトンを獲得。また、2011年には10年連続ゴールドグラブ賞を受賞したアンドリュー・ジョーンズを加え、外野手の層を厚くしました。彼らのような守備に秀でたベテラン外野手が在籍した年は、どちらも地区優勝を果たしています。
さらにヤンキースは、ニューヨーク特有の変わりやすい気候のせいで、雨天中断や雨天中止となるケースが多いのです。その結果、他球団より試合時間が長くなり、ダブルヘッダーや、ナイターの翌日にデイゲームということも少なくありません。ベテランを多く抱えるチーム事情を考えると、選手層を厚くしておきたいのは当然でしょう。
シーズン開幕直後、イチロー選手はベンチスタートかもしれません。高額契約で移籍してきたエルズベリーやベルトランをスタメンで起用する可能性があると思います。しかし、長いシーズンを考えると、イチロー選手がスタメンとして出場するチャンスは多くなると思います。イチロー選手は決して控え外野手ではありません。「4人のレギュラー外野手のひとり」と考えるべきです。必ずイチロー選手が活躍するシーンは増えてくると思いますので、ぜひともシーズンを通して見てください。イチロー選手は世界一奪還のために欠かせないピースなのです。
著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)
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