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今だから言える「イチロー2年契約の真実」 (2ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • photo by Getty Images

 その歴史に残る決断から12年経った昨年のオフ、フィリーズのGM補佐となったギリックはイチローの技術に魅了され、契約終了時に40歳を過ぎる野手には稀(まれ)な複数年契約を結ぶように強烈に後押しした。

「私たちは彼のことを、ずば抜けた才能を持ち、並外れた選手であるという目で常に見てきた」とギリックは複数年を後押しした理由を説明し、そしてこう続けた。

「私は、年齢というものは数字だけで表せるものではないと思っています。現在、イチローは39歳。ある選手にとっては、その年齢はキャリア終盤かもしれません。しかしながら、彼の野球に対する理論、体の状態、そして試合の運び方は、35歳以下だと私たちは見ているのです。我々が所属するナショナル・リーグは指名打者がないので、守備もできる野手というのが非常に大切になってきます。まだまだイチローは、打球を追うことに優れているだけでなく、肩も武器だし、そうしたことを踏まえると、ナショナル・リーグではとても価値があります。我々の望んでいる守備力の高いチーム作りに、2年間十分に貢献してくれると思いましたし、その先のことも考えていました。イチローとはシアトル時代からの仲なので、彼がどのように戦い抜くか熟知しているつもりですし、彼の能力はこのチームに莫大な利益をもたらしてくれると思いました」

 俊足だったイチローの足が衰えたんじゃないかというネガティブな声もあったが、ギリックがイチローを獲得したいと思う気持ちを変えることはなかった。

「まったく関係ない。誰でも歳をとればスピードは落ちるものです。重要なのは、そのことが彼の打撃に影響するかどうかなのです。私の答えは『ノー』です。確かに、内野安打は減ってしまうし、その分、打率は下がるかもしれません。でも、彼のバットにボールを当てるという能力に影響するわけではないのです。彼の打ち方そのものが、足のスピードとは関係のない構造なのです」

 ギリックによると、イチローのユニークな打法は、その他にも利点があるという。多くの打者は歳をとるにつれて足腰が弱くなってくるため、打撃に致命的な衰えが見えてくるケースが多々ある。だがイチローの打法は、そこまで下半身に頼った打ち方ではないため、他の打者とは違いそれほど影響は受けないとギリックは考えている。

 この考えを説明するのに、ギリックはちょっと変わった比較をした。彼は、トロント・ブルージェイズのGMを1978年から17年間務める間、アイスホッケーの虜(とりこ)になっていった。ちょうどその頃、アイスホッケー史上最高の選手と称されていたウェイン・グレツキーの全盛期で、エドモントン・オイラーズとロサンゼルス・キングスで活躍していた時期だった。

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