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【MLB】春の珍事。三冠王候補プホルスに何が起こったのか? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 また、この1ヵ月の個人成績でも、非常に驚くことがありました。この春、良い意味で一番驚かせてくれたのは、ロサンゼルス・ドジャースのマット・ケンプでしょう。先日、マジック・ジョンソンら投資家グループへの球団売却が完了し、ドジャースは新たに生まれ変わりましたが、明るい雰囲気のなか、チームも16勝6敗と好発進。1981年以来、最高のスタートダッシュを切りました。ちなみに1981年といえば、ドジャースがワールドシリーズでニューヨーク・ヤンキースを破り、世界一に輝いた年です。

 そんなドジャースの原動力となっている27歳のケンプは、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、昨年ナ・リーグで39本塁打・126打点の二冠王に輝き、リーグ3位の打率.324もマークした若きスーパースターです。2011年のナ・リーグMVP投票でもライアン・ブラウン(ミルウォーキー・ブルワーズ)に次いで2位となり、権威ある『ベースボール・アメリカ』誌では『プレイヤー・オブ・ザ・イヤー』にも選ばれました。

 その勢いは今シーズンも止まらず、4月のケンプは打率.417・12本塁打・25打点と、主要三部門でリーグトップを記録。4月のサンディエゴ・パドレスのチーム本塁打数が11本、シカゴ・カブスが9本だったので、ケンプの月間12本塁打は驚異的なペースです。開幕から2週連続で週間MVPに選出され、昨年の最終週も選ばれたケンプの『3週連続週間MVP受賞』はメジャー初の快挙。さらに、4月に『打率4割・10本塁打・25打点』を記録したのは、1920年に『打点』というものが公式記録として採用されて以来、史上3人目です。まだ開幕して1ヵ月ですが、早くも『三冠王』の声も聞こえています。

 そのケンプとは対照的に、まさかの大スランプに陥っているのが、現役で最も三冠王に近いと言われているアルバート・プホルスです。世界一になったセントルイス・カージナルスから10年総額2億4000万ドル(約197億円・当時)の超大型契約で移籍してきたのに、ここまで調子を崩すとは思いもしませんでした。なんと4月の成績は、打率.217・0本塁打・4打点。10年連続で『3割・30本塁打・100打点』を記録したプホルスが、4月にホームラン0本(92打数)なんて信じられません。

 プホルスが不調なこともあって、4月のエンゼルスは開幕から6勝14敗と低迷し、ライバルのテキサス・レンジャーズに大差を付けられてしまいました。ただ、エンゼルスが2002年に初の世界一に輝いたときも、4月の開幕からの成績は奇しくも同じ6勝14敗でした。そこから驚異的な巻き返しで球団新記録(当時)の99勝をマークし、頂点をつかんだので、5月以降の奮闘に期待しています。プホルスには一刻も早く、ア・リーグの環境に慣れて、本来の実力を発揮してもらいたいです。

 予想外にブレイクしたチームや、大スランプに陥ったスーパースターなど、開幕1ヵ月の間にいろんなことがありました。これらの出来事が『春の珍事』で終わるのか、それともシーズン後、『2012年の10大ニュース』となるのか、5月の戦いぶりにも注目です。 

著者プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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