【MLB】春の珍事。三冠王候補プホルスに何が起こったのか?

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

超大型契約でエンゼルスに移籍したアルバート・プホルス。本調子に戻るのはいつの日か超大型契約でエンゼルスに移籍したアルバート・プホルス。本調子に戻るのはいつの日か メジャーリーグが開幕して、1ヵ月が経ちました。そこで今回は、この4月の1ヵ月間を見て、「春の珍事」とも言える意外な現象・出来事について触れたいと思います。

 まずは2012年、全米中に衝撃を与えてくれたのは、間違いなくナ・リーグ東地区に所属するワシントン・ナショナルズでしょう。2005年にカナダのモントリオールからアメリカの首都ワシントンDCに移転して以来、ナショナルズは毎年のように東地区の最下位を争うチームでした。しかし昨年、ようやく初めて80勝81敗で3位となって勝率5割目前まで迫ると、2012年、開幕から予想外の快進撃を見せたのです。かつて巨人で助っ人外国人として活躍したデーブ・ジョンソン監督のもと、4月に14勝8敗を記録。同じ地区の強豪フィラデルフィア・フィリーズやアトランタ・ブレーブスを押さえ、今も首位をがっちりとキープしています。

 好調の最大の要因は、大化けした投手陣です。4月のチーム防御率2.33はリーグトップ。しかも22試合で、わずか6本しかホームランを打たれていません。特に先発陣の成績が抜群で、防御率1.78、WHIP(※注)0.89と驚異の数字を記録。超一流投手の証と言える『WHIP1点以下』を、先発陣全員の平均で記録したというのは本当にビックリしました。この先発陣を引っ張っているのは、2010年に鮮烈なデビューを飾った23歳の豪腕スティーブン・ストラスバーグ。彼を筆頭とする先発5人中4人はすべて26歳以下で、そろって防御率1点台をキープしています。ジョンソン監督はシーズン前に、自信を持って「ナ・リーグで最高の投手陣になる」と語っていましたが、まさに現実のものとなるかもしれません。

(注※)WHIPとは、被安打数と与四球数(与死球数は含まない)を投球回数で割った数値で、1イニングあたり何人の走者を出したかを表わす。一般に先発投手であれば、1.00未満なら球界を代表するエースとされ、1.20未満ならエース級と言われている。

 さらにナショナルズは打線にも注目すべき若手スター候補がいて、4月28日には19歳の怪物ブライス・ハーパーがついにデビューしました。まだ数試合の出場ながら、早くも走攻守にわたって超大物の片鱗を見せています。ドラフト全米1位コンビ(2009年:ストラスバーグ、2010年:ハーパー)のそろい踏みで、アメリカでは今、ナショナルズがすごい話題になっています。以前から注目していましたが、ここまで急激にブレイクするとは思いもしませんでした。

 一方、あまりにも調子が悪くてビックリしたのが、ボストン・レッドソックスです。ボビー・バレンタイン新監督のもと、大きな期待を寄せられていた2012年でしたが、開幕から4勝10敗とスタートダッシュに大失敗。なんとあの名門チームが、ア・リーグ東地区の最下位となってしまったのです。

 特に4月21日に宿敵ヤンキースを迎えた試合では、5回まで9対0と大量リードしながら15点も奪い返され、まさかの大逆転負け。バレンタイン監督が投手交代でマウンドに行ったときに地元ファンから激しいブーイングを受けるぐらい、チームの雰囲気は最悪の状態でした。今年は本拠地フェンウェイパークの開場100周年だというのに、これでは祝うどころの話ではありません。さらに、バレンタイン監督が主力選手のケビン・ユーキリスに対して「気合が入っていない」と発言したことで、早くも内紛が勃発。4月後半に6連勝してようやく勝率を5割近くまで戻しましたが、良くも悪くも話題に事欠かないバレンタイン監督らしい『春の珍事』だったと思います。

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