【高校野球】大阪桐蔭3度目の春夏連覇のカギを握る男 歓喜の陰で進んでいたエース再生の物語 (4ページ目)
5回から入ったブルペンでの投球も、初戦に比べて格段に安定。さらに状態は上がっているように見えた。それでも、吉岡がマウンドに上がることはなくゲームセット。大阪桐蔭の4年ぶりの優勝が決まった。
前にも触れたように、閉会式前に見せた浮かない表情は、その後の取材の間もしばらく続いていた。歓喜に包まれる場のなかで、どんな顔をしていればいいのかわからなかったのだろう。
やがて話題がブルペンの投球に及び、「登板をアピールは?」と聞くと、「ちょっとだけしました」と少し表情を緩めた。ブルペンから戻り、「ピッチング終わりました!」と元気よく報告したという。ただ、その後、西谷浩一監督から声がかかることはなかった。
勝利を最優先した結果、川本続投が最善だったのだろう。それだけ川本の投球が見事だったのは間違いない。一方で、吉岡にとっては、この悔しさを糧に夏へ向かえという、指揮官のメッセージも込められていたのかもしれない。その思いを伝えると、吉岡は「それはあると思います」とうなずいた。
だとすれば、ここからだ。指揮官の思いに、エースがどう応えていくのか。18日に初戦を迎える春の大阪大会のメンバーに、吉岡の名があった。選抜後も続けて登板できる状態にあるということだろう。
ならば、実戦を重ねるなかでフォームは固まり、投げる体力も戻り、ボールもさらに上がっていくはずだ。藤浪晋太郎(DeNA)と澤田圭佑(ロッテ)が競い合った2012年、根尾昂(中日)、柿木蓮(元日本ハム)、横川凱(巨人)が揃った2018年にも劣らぬ強力投手陣が完成すれば。3度目の春夏連覇への道も見えてくる。
その軸は、やはり吉岡だ。春の日本一の裏で喜びきれなかったエースの存在こそが、夏を戦う大阪桐蔭にとって最大の強みになるに違いない。
著者プロフィール
谷上史朗 (たにがみ・しろう)
1969年生まれ、大阪府出身。高校時代を長崎で過ごした元球児。イベント会社勤務を経て30歳でライターに。『野球太郎』『ホームラン』(以上、廣済堂出版)などに寄稿。著書に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)、『一徹 智辯和歌山 高嶋仁甲子園最多勝監督の葛藤と決断』(インプレス)。共著に『異能の球人』(日刊スポーツ出版社)ほか多数。
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