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【高校野球】大阪桐蔭3度目の春夏連覇のカギを握る男 歓喜の陰で進んでいたエース再生の物語 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Shiro Tanigami

 試合後の吉岡は「まだフォームのバランスが......」「次までに固めて......」と、フォームについての言葉を繰り返した。それでも2回にはこの日最速の152キロをマークし、イニングを追うごとに体もほぐれ、ボールもまとまり始めていた。

 5回途中まで109球を投げて4失点。その投球に少し安堵したと伝えると、吉岡は柔らかな表情を見せ、「なんとか投げられたかなとは思います」と語った。

 ただ、この投球が次にどうつながるのかはわからず、正直なところ不安のほうが大きかった。しかし、その見方を一変させ、次戦以降への期待を膨らませてくれたのが、石田(寿也)、橋本の両コーチの言葉だった。奇しくもふたりは、同じ表現を用いてこう語った。

「本人にとっては、甲子園で投げ込みをやっているようなものだと思います」

 昨秋以降はコンディションに配慮し、ノースロー期間を設けるなど慎重に調整を進めてきた。そのため、ほかの投手のように投げ込みで肩をつくり、フォームを固めきる前に選抜を迎えることとなった。つまり、その遅れを大会中に投げながら取り戻している、ということだ。

 だとすれば、登板を重ねるごとに状態が上向いていく可能性は高い。信頼するふたりのコーチの言葉によって、私の中にあったコンディション面への不安は払拭された。あとは、大会期間中にどこまでボールが上がってくるのか。注目はそこに絞られた。

【ブルペンで終わった復活劇】

 三重戦から中2日で迎えた準決勝の専大松戸(千葉)戦に吉岡は先発した。ふたりのコーチの見立ては当たっていた。前回よりも球速のアベレージ、球質ともに向上し、制球も安定。7回を投げて5安打、5奪三振、3四死球の1失点と試合をつくった。

 試合後、前回登板から取り組んだ点としてフォームの修正を挙げた吉岡は、お立ち台の上で笑みを浮かべながら、うれしそうに手応えを語っていた。

 次があれば、もう一段階上の吉岡が見られる──。そう確信して迎えた2日後の智辯学園(奈良)との決勝戦。先発は川本だったが、試合が進むにつれ、最後は吉岡がマウンドに上がるのではないかという思いが浮かんでいた。

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