【ドラフト】仲間はすでにNPBへ 残された男たちのラストチャンス、独立リーグの3人の物語 (3ページ目)
身長170センチ、体重69キロと小柄ながら、グリップをダイナミックに動かしてタイミングを取る。いわゆる「ヒッチ」と呼ばれる動作から、ヒットゾーンに打球を運んでいく。リーグ戦では昨季に打率.351、今季も打率.352と安定した数字を残している。
「バッティングは誰かに教わったわけではなく、自分の形をつくり上げてきました。『ピッチャーに入っていく』イメージでタイミングを取って、全部のボールを打ちにいきながら、そのなかで見極めていきます」
昨季から高打率をマークしながら、NPBスカウトから注目される存在ではなかった。今季は田上健一コーチ(元・阪神)に師事し、走塁面を一から見直した。すると、盗塁数は昨季の10個から54個に激増。リーグ新記録を樹立するほどに急成長を遂げた。
「一番よくなったのは、観察力です。ピッチャーのモーションだけでなく、キャッチャーの構え方を見て変化球がくることを予測したり、カウントによって球種が読めるようになったり。もともと足は速かったんですけど、リーグ戦で戦うなかで勉強していきました」
グランドチャンピオンシップ初戦となった火の国戦では、2安打1打点とバットで存在感を放った一方で、0盗塁に終わった。2回あった盗塁シチュエーションでは徹底的なマークにあい、スタートを切ることは難しかった。上野は「盗塁できなくて悔しかった」と明かしつつ、こうも語っている。
「今日は牽制やクイックが上手な投手が相手でしたし、場面的に100パーセントの確信がなければ走ってはいけない状況でした。盗塁は成功すればチャンスが広がりますけど、失敗すれば相手に流れがいってしまうので。自分は『絶対にこのバッテリーなら成功する』という確信を持って走りたいんです。今日は走れませんでしたけど、結果的にチームが勝てたのでよかったです」
上野のような右投左打の外野手はNPBで飽和状態にあり、ドラフト指名されるハードルは一層高くなると言われている。当然、本人も痛いくらいに承知している。それでも、上野が天井から吊るされた細い糸をよじ登るようにNPBを目指すのはなぜか。
そう聞くと、上野は決然とした口調でこう答えた。
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