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【高校野球】北海道出身の元U−15日本代表・林将輝は、なぜ甲子園出場1回の大阪学院大高へ進学したのか (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【この夏に浴びた高校野球の洗礼】

 ところが、林は初めての夏の大会で、高校野球の洗礼を浴びることになった。

 今夏の大阪大会。下馬評では有力校のひとつに数えられた大阪学院大高だが、4回戦で近大付に6対10で敗れている。この試合に2番・一塁手として出場していた林は、5対2とリードして迎えた7回裏にリリーフ登板。思うような投球ができなかった。

「7〜8割で投げることを意識して、ストレートもスライダーもキレは悪くなかったんです。でも、結果としてはよくなくて。なぜかストライクが入らなくて、フォアボールを出してしまって。ランナーをためた状態で交代になってしまいました」

 打者4人と対戦して、1アウトしか取れずに2失点で降板。その後はリリーフ陣が打ち込まれ、大阪学院大高は逆転負けを喫した。林は夏の高校野球に漂う独特なムードを感じ取っていたという。

「流れの怖さを感じました。バッティングも打てなかったし、投げても結果が全然よくなくて。『3年生に申し訳ない』という思いが大きかったです」

 U−15ワールドカップで世界一になっても泣かなかった男は、大阪大会で敗れたことで涙を流した。

 それでも、林はすでに次の目標に向かって切り替えている。

「秋は、夏の悔しい思いを絶対に繰り返さないようにしたいです。ピッチングだけでなく、バッティングでもチームを引っ張っていかないといけないと思うので、強い気持ちを持って戦っていきたいです」

 辻盛監督によると、林を野手として評価するスカウトもいるという。大阪学院大高は動作解析担当コーチを置くなど、さまざまな角度から選手の技術向上をサポートしている。辻盛監督は「林は動作解析にハマったみたいで、バッティング練習ばかりしているんです」と苦笑する。

 とはいえ、林は「将来はピッチャーでプロに行きたい」と口にする。山本由伸(ドジャース)のように、上背はなくても球の質で勝負できる投手を目指している。

「まずは高校で体を大きくして、プロで勝負できる球質、コントロールを身につけていきたいですね。身長もまだ完全には止まっていないので、上にも横にも大きくしていきたいです」

 群雄割拠の大阪で、北海道からやってきた「スーパー1年生」は真価を発揮できるのか。そのストレートを1球でも見れば、林将輝という投手がただ者ではないと理解してもらえるはずだ。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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