語学も実績もゼロから始まった井上心太郎のアメリカ挑戦記 次なる目標はNPBドラフトで指名されること (2ページ目)
「決め手になったのは、カンザス州立大が強いチームということ。あとは自分と入れ替わりでMLBドラフト1巡目の選手が抜けること、学費面でもある程度の免除をしてもらえたことも大きかったです。親は『自分のしたいようにしていいよ』と言ってくれましたけど、やっぱりアメリカ生活で金銭負担がかかることは悩みの種だったので」
【考えるプレーが自分の武器】
NCAA(全米大学体育協会)のディビジョン1では、今季58試合の出場で打率.279、9本塁打、31打点を記録。守備では二塁と遊撃をメインに、そつなくこなした。佐々木麟太郎(スタンフォード大)が記録した7本塁打を上回ったが、井上は「自分はホームランバッターではない」と強調する。
「もちろん、バットを強く振れるところは自分の強みです。でも、大谷翔平さん(ドジャース)や鈴木誠也さん(カブス)のように、ホームランを何十本も打てるタイプではないと思っています。むしろ、『考えてプレーできる』ところが、自分の武器なのかなと。シチュエーションに応じて、時にはバントをすることもありますし、ファウルを打ってカウントを整えることも好きです。『こんな選手がひとりいるチームは強いよな』と思ってもらえる、チームに勝利をもたらせる選手でありたいんです」
カンザス州立大でも、「チームを勝たせる選手」として評価を受けている。井上はカンザス州立大の指導者が現地メディアの取材に対して、「井上はチームで一番賢い選手だ」と語っていたことを知り、報われた思いがしたという。
「自分は数字に出にくいところも大事にしていたので、今の大学がしっかりと評価してくれるのはありがたいです。自分が粘って球数を投げさせるところ、次のバッターに相手の情報を伝えているところ、あえて内野ゴロを打ってランナーを還しているところ、高い出塁率(.407)を残しているところも見てくれている。アメリカらしいダイナミックさも野球の魅力なんですけど、自分は考えて野球をするのが好きなんです」
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