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「思考が変われば行動が変わる」 元中日・吉見一起が語るドミニカでの体験と高校球児に伝えたいこと「大谷翔平くんが究極」 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 日本人では、まずあり得ない考え方だろう。ドミニカだからこそ出合えた発想法は、吉見氏にとって大きなヒントになった。

「僕自身はすごく神経質なんです。それがいいなと思う時もあるけど、しんどいなと思う時もあって。野球では『切り替えが大事』と言われますよね。すぐに次の勝負が来るので、その時に『やり返してやろう』と臨むのか、『また同じ失敗を繰り返したらどうしよう』と思うのでは、結果が全然違います」

 打たれた直後、次のバッターを迎えるまでに頭を切り替えて、後続を打ち取れるかが投手には重要になる。

 ただし、失敗をうやむやにするわけではない。

「何がよくて、何がダメだったかという振り返りをしっかりする。それは大事なことだと思います」

 ドミニカから帰国して迎えた2008年シーズン。吉見氏は入団3年目で初の開幕一軍入りを果たすと、10勝3敗の好成績を残した。

 そして翌年、16勝7敗で最多勝を獲得する。年間4完封&無四球3試合はリーグ最高の数字だった。

 2011年には最多勝(18勝3敗)、最優秀防御率(1.65)、最高勝率(.857)と投手三冠に輝くが、高いパフォーマンスの裏には日常の変化があったと振り返る。

「『思考が変われば行動が変わる』とか、『口ぐせを変えると、人生が変わる』と言われるけど、そのとおりだと思います。実際、日々を前向きにすごすことで疲れ方も変わってくるし。もちろんネガティブなことも考えるけど、そればかり考えていたら心が疲れてしまう。そういう考え方になったのは、普段の過ごし方から変わったからだと思います」

【前向きな思考が野球人生を変えた】

 吉見氏はドミニカで過ごした2カ月がきっかけになり、前向きな考え方を強くすると、野球人生が好転した。キャリア後半は右ヒジの故障に悩まされ、2020年限りで現役生活に終止符を打ったが、指導者になりたいという次の道に踏み出した。

「考え方で未来は変わるんだなと、自分で経験できました。トヨタの選手たちにいつも伝えているのは、『物事をどう捉えるかが大事』だということです。すべてが『まあ、いいや』とするのはダメだと思うけれど、人生一度きりなので、常にある程度前向きにいることはすごく大事だと思います。これから会う高校球児にも伝えていきたいですね」

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