【選抜高校野球】甲子園を席巻した浦和実の変則左腕・石戸颯汰 対戦相手が「レベルが違う」と唸った120キロ台の速球の秘密 (2ページ目)
石戸の趣味は将棋だという。もしかしたら、将棋で培った「先を読む力」が投球に好影響を与えているのではないか。破れかぶれで聞いてみると、石戸は困惑した表情でこう答えた。
「配球はキャッチャーのサインどおりに投げているので......。サインに首を振ることもないです」
つかみどころのない受け答えに終始し、取材者としての力不足を痛感せずにはいられなかった。もしかしたら、石戸に打ち取られた打者たちも、こんな無力感を覚えたのかもしれない。
【18イニング連続無失点の快投】
石戸はセンバツ初戦で滋賀学園を6安打完封に抑え込んでいた。滋賀学園の正捕手を務める小野心太朗(こたろう)に話を聞いてみると、意外な言葉が返ってきた。
「気づいた時にはボールが手元まできているんです。昨年の近畿大会は技巧派の左投手が多かったので、石戸投手も『似たようなタイプだな』と思っていたんです。でも、対戦してみたら全然違いました。レベルが違う。自分たちの見積もりが甘かったです」
その後も石戸の快進撃は続いた。石戸の18イニング連続無失点の快投に支えられ、浦和実は初出場ながらベスト4に進出した。
レベルが違う----。滋賀学園の小野の言葉が、ずっと脳裏で繰り返されていた。
石戸とバッテリーを組む野本大智に「石戸投手のボールは、体感速度が速いのですか?」と尋ねると、野本は首をひねった。
「スピードはそこまで速くは感じないんです」
野本は「ただ」と言って、こう続けた。
「低めの球が垂れないんです。低めのボールになるかな、と思った球が垂れずにストライクになる。高めの球は伸びてくるので、フライが増えるのだと思います」
一方、遊撃手の橋口はこんな見方を示している。
「ショートから見ていると、ストレートとカーブが同じ軌道でリリースされて、ストレートはそのまま高めにいって、カーブはストンと落ちるイメージです。紅白戦で対戦しても、高めのストレートと低めのカーブにみんなつられていました」
2 / 3