沖縄高校野球の2強を追う創部10年目のKBCはプロも輩出1学年の部員数約20人にこだわる理由は?
群雄割拠〜沖縄高校野球の現在地(4)
KBCの10年(後編)
前編:「奇跡の12人」から始まったKBCの10年はこちら>>
興南と並び"沖縄二強"のひとつに称されている沖縄尚学と、創立1年目で謎に包まれた部分が多いKBC。どちらに進学するかとなれば、おそらく前者に進む中学生が多いだろう。ただし、それが"正解"につながるとは限らない。
「オリックスに行った宜保(翔)くんは、ウチに来てほしかったけど、KBCに行ってよかったと思います」
そう語るのは、沖縄尚学の比嘉公也監督だ。
KBC時代のオリックス・宜保翔 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【出場機会が多いという強み】
「できたばかりの野球部で、自分を見失わずにやるべきことをやる。おそらく高校での3年間でそれを身につけたから、プロに行っていると思います」
将来、飛躍することを見据えた場合、自分はどんな環境に身を置くべきか。簡単に出る答えではないからこそ、熟慮が必要になる。
中学時代から野球選手として有望視され、生徒会長も務める宜保は学業も優秀だったという。ではなぜ、進学先としてKBCを選んだのだろうか。声をかけた現KBC監督の神山剛史氏が明かす。
「宜保は(沖縄尚学に進んだ)中学校の先輩から、『頑張ったらベンチに入れるよ』と言われ、『だったらKBCに行って、自分の力で倒せばいい』とウチに来たんです。そういうことに価値を見出してくれて、最終的にプロ(オリックス)にまで行くことができました」
甲子園を狙える強豪校に進むのがエリートコースのひとつではあるが、出場機会を多く得られる新設校で経験を積むというのも魅力的だ。そう考えて宜保と同じタイミングでKBCに入学したのが、現在、沖縄電力で捕手としてプレーする石原結光だった。
「一期生が1年生ながらけっこういい結果を残していましたし、チームが新しいので多少不安はありましたが、試合に出やすいし、チャンスもある。午前に授業を受けて、午後から野球というのも、KBCに行きたいと思った理由のひとつでした」
石原は宜保と一緒に入学した2016年秋に1年生大会で優勝すると、3年時には春季大会で興南を破って初優勝。九州大会でもベスト4まで勝ち上がった。
「メンバーもけっこう集まって、いい思いができました。伝統があまりないので、縛られることもなく、自分がしたいことというか......のびのびできました(笑)」
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著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。