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沖縄高校野球の2強を追う創部10年目のKBCはプロも輩出1学年の部員数約20人にこだわる理由は? (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

「上場企業が少ないからか、沖縄では公務員になりたい子が多くいます。そこでKBCの文武両道として、公務員になる勉強をして1次試験を受かるレベルまで行こうというクラスを立ち上げました」

 野球部は全員スポーツコースに所属し、そのなかに公務員特進クラスがある。朝9時にショートホームルームが始まる前、希望者は8時すぎから早朝講座で勉強する。1年生の野球部員20人のうち、9人が受講している。

「野球の時間を減らすことも考えましたが、最近は高校の部活動でやめる子も多くなっているので、集大成の高校野球をお腹いっぱいさせたいと考えました。部活はみんな、2時からできるカリキュラムをそのままにしています。そこは県立高校と異なるように、マーケティングで経営面の差別化を図りたい」

【1学年約20人の部員数にこだわる理由】

 学校は生徒数を増やしたいと望むが、神山監督は1学年約20人という部員数にとどめている。全体練習を全員で行ない、練習試合で等しくチャンスを与えるためだ。

「よく『挑戦して、失敗しなさい』って言うんです。失敗することで、自分のなかに基準が生まれるので」

 たとえば土曜の練習試合でうまくいかなかった場合、「次にチャンスをもらえたら、どういう行動をすればいいのか考えて報告しなさい」と伝える。改善が見られた場合に限り、翌日もチャンスを与える。現在は2学年で45人という部員数なので、そうした起用も可能になる。神山監督が続ける。

「あとから聞いたら、『部員数が限られてチャンスをもらえるので、KBCを選んだ』という子もいました。最初はうまくいかなくても、もう一度チャンスをあげた時にうまくできたら、その子は次からちゃんとやるようになる。失敗をどう生かすかは、大人になっても必要なことだと思います」

 少子化が進むなか、高校生の獲得競争は激しさを増すばかりだ。どうすれば入学先に選ばれ、卒業までに必要な学びの機会を提供できるか。神山監督は大卒後に経営関係で働いた経験も踏まえ、マーケティングの観点から工夫を凝らしている。

「座って授業を受けているだけで、『本当に頭に入っているのかな?』と思うこともあります。はたして、ウチの生徒たちのためにこれまでの常識でいいのか。大人も一回疑問を持たないといけないと思い、『実学もやろう』と職員会で話しているところです。もちろん『高校生だから勉強しないといけない』という意見が大半だと思うし、否定はしません。同時に、もっといろんな体験をできるようにしても面白いと思います」

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