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沖縄尚学・比嘉公也監督を直撃 「エナジックやKBCといった野球強化に取り組む新鋭校をどう思うか?」 (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

【練習メニューは選手で考える】

 どのように與座や岡留のような考え方を養わせていくのか。比嘉監督は24歳で監督就任した頃から「強制」で取り組ませてきたが、思うように結果が残せなかった2018年頃、転機が訪れる。

 北海高校の平川敦監督が沖縄県の指導者講習会でやってきた際、経団連(日本経済団体連合会)に所属する企業が、どんな学生を採用するかという話にヒントを得た。

「10数年連続で変わらない順位が、コミュニケーション能力と主体性、チャレンジ精神だったと思います。そう聞いた時に、そういう学生になればいいんだと単純に考えるようになりました」

 具体的には、練習メニューを選手たち自身で考えさせるようにした。

 ただし、高校生は急に「考えろ」と言われても難しいので、フレームワークを示す。「GROWモデル」と言われるものだ。コーチングに欠かせない4つのプロセスで、「G=Goal(目標)」「R=Reality Check(現実の確認)」「O=Options(選択肢)」「W=Will(意志)」をうまく使い、目標に導いていく手法である。比嘉監督が説明する。

「ゴールを設定し、そのゴールを目指す自分たちの現状をわかったうえで、そのためにどんな練習メニューや方法をとったらいいのか。そこまで行ってから、行動しようと。『はい、練習メニュー。じゃあノック、バッティングします』ではなくて。チーム、個人として現状をちゃんと把握させて、だからこの練習をしていく。そういう考え方を投げかけたうえで、メニュー係を中心に、前日に僕に練習メニューを連絡してくるというパターンです」

 24歳から野球部を率い、指導歴20年。選手、監督としてセンバツ優勝を経験し、沖縄尚学を名門として輝かせる比嘉監督の取り組みを視察に来る指導者も多い。

「どうやったら勝てるんですか?」

 よく聞かれるというが、「わかんないです」と返している。

「勝ち方って、このグラウンドにしかないと思うんですよね。変な話、僕がほかの学校に行っても、取り組み方も方向性も違うと思うので、そこのやり方を意識してやっても選手は同じように動かないと思いますし」

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