森友哉は天性の打撃を発揮し、4度の甲子園で打率.473、5本塁打 自身が印象に残る一打として挙げたのは? (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

「あの時はピッチャーが投げてくる前に球筋がパッと頭に浮かんで、そのイメージどおりにバットを出したら左中間へあの打球が飛んでいったんです。調子がいい時に近いことはあっても、あそこまではっきり頭にライン(ボールの軌道)が浮かんできて打てたのは、あの打席だけです」

 この話題から、普段なら「何も考えずに強い打球を打つことだけを考えています」といった感じで流されることの多かった打撃論について、珍しく話が広がった。

「極意っていうほどじゃないですけど、打席のなかで一番大事にしているのは"無"になることです。頭にいろいろと浮かんできたらいいことがない。やっぱり集中できないですから。だから、僕は配球もほとんど考えず、来た球に反応する感じで打っています。そのためにも"無"になって、ボールを待つことを大事にしています」

 さらに、森はこう続けた。

「右足を上げたところで、打てるかどうか大体わかります。足を上げて、下ろしていくなかでタイミングの微調整はしますが、右足を上げた時にピッチャーのタイミングとピタッと合っていれば、まず打てる感じがあります。やっぱりタイミングですね」

【最後の夏に見せた異変】

 何度も森の打席を見るなかで、いつも感心させられたのが、結果はもちろんだが、その内容だった。当時、50試合以上は見たが、完全にタイミングを外されたり、形が崩れたスイングは数えるほどしかない。結果は凡打であっても、常に自分のスイングができていた。どんな投手と対戦してもタイミングを合わせ、フルスイングする。これこそ森の非凡さである。

 2年夏の甲子園で済々黌(熊本)・大竹耕太郎(阪神)の内角低めのストレートを、浜風をものともせずライトスタンドへ突き刺した一発も見事な打球だった。

 つづく準々決勝の天理(奈良)戦では先頭打者本塁打。右腕・山本竜也の外角高め、見逃せばボールゾーンの143キロのストレートを、左手を被せながらセンター右へ運んだ。この森の技術と対応力が詰まった一打も印象深い。

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