夏の甲子園でヒットを目指した「地方大会打率0割台」8人の物語...悔しさと苦しさと恥ずかしさと (5ページ目)
体が開く、悪いクセも出てしまっていたと語る。それでも、「進塁打を打ったり、(相手投手に)球数を投げさせようと意識した」のが認められたのか、甲子園では背番号7に昇格。気持ちを新たに聖地に乗り込んだ。だが、迎えた初戦の早稲田実業(西東京)戦ではスタメン落ち。途中出場で2打席に立ったが、詰まったセカンドゴロと惜しい当たりのレフトフライに終わった。
「最後は開き直って真っすぐ一本打とうと思っていったんですけど、力が足りませんでした」
悩む人、悩まない人。考え込む人、考えない人。気にする人、気にしない人。打率0割台でも、とらえ方はさまざまだ。だが、どちらにしても、数字は変えられない。チームを紹介する大会雑誌には数字が載る。冒頭に登場した聖和学園の鈴木は言った。
「切り替えるためには、自分の状態を受け入れること。逃げるのが一番ダメ。0割は事実なんで、受け入れるところが始まりだと思います。受け入れれば、やるべきことがわかる。それを見つけて取り組めば、結果は変わると思います」
チームスポーツはチームの勝利が最大の目標。とはいうものの、自分の数字だって気になる。自分が結果を残したうえで勝つのが一番いいに決まっている。たとえ、結果が出なくても逃げてはいけない。受け入れて、前に進む。そこに夜明けがやってくる。
著者プロフィール
田尻賢誉 (たじり・まさたか)
1975年、神戸市生まれ。学習院大卒業後、ラジオ局勤務を経てスポーツジャーナリストに。高校野球の徹底した現場取材に定評がある。『明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』『弱者でも勝てる高校野球問題集173』(ベースボール・マガジン社刊)ほか著書多数。講演活動を行なっているほか、音声プラットフォームVoicy(田尻賢誉「タジケンの高校野球弱者が勝つJK」/ Voicy - 音声プラットフォーム)でも毎日配信している。
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