夏の甲子園でヒットを目指した「地方大会打率0割台」8人の物語...悔しさと苦しさと恥ずかしさと (5ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka

 体が開く、悪いクセも出てしまっていたと語る。それでも、「進塁打を打ったり、(相手投手に)球数を投げさせようと意識した」のが認められたのか、甲子園では背番号7に昇格。気持ちを新たに聖地に乗り込んだ。だが、迎えた初戦の早稲田実業(西東京)戦ではスタメン落ち。途中出場で2打席に立ったが、詰まったセカンドゴロと惜しい当たりのレフトフライに終わった。

「最後は開き直って真っすぐ一本打とうと思っていったんですけど、力が足りませんでした」

 悩む人、悩まない人。考え込む人、考えない人。気にする人、気にしない人。打率0割台でも、とらえ方はさまざまだ。だが、どちらにしても、数字は変えられない。チームを紹介する大会雑誌には数字が載る。冒頭に登場した聖和学園の鈴木は言った。

「切り替えるためには、自分の状態を受け入れること。逃げるのが一番ダメ。0割は事実なんで、受け入れるところが始まりだと思います。受け入れれば、やるべきことがわかる。それを見つけて取り組めば、結果は変わると思います」

 チームスポーツはチームの勝利が最大の目標。とはいうものの、自分の数字だって気になる。自分が結果を残したうえで勝つのが一番いいに決まっている。たとえ、結果が出なくても逃げてはいけない。受け入れて、前に進む。そこに夜明けがやってくる。


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