甲子園で苦戦つづく北海道勢 道産子球児たちの道外流出はなぜ止まらない? (4ページ目)
中学の指導者たちも、教え子たちを道外に出したい人ばかりではない。とかち帯広シニアの森徹監督は言う。
「ウチと大空シニア、釧路シニアの道東3チームの選手で甲子園を目指せるような学校があったらいいよね、と(指導者同士で)言っているんです」
現状でそのような学校はない。その結果、それらのチームの選手たちは札幌や道外へと進学してしまうことになる。とかち帯広シニアからも近年、大阪桐蔭、花咲徳栄、明秀日立(茨城)などに進学しているが、とかち帯広シニアから地元・帯広の白樺学園に進んだ川島陽琉(はる)はこう言っていた。
「最終的にはいつも支えてくれている家族のためにも、地元の学校で甲子園に出て恩返ししようと決めましたけど、自分も道外に行きたい気持ちはありました。やっぱり、道外のほうがレベルは高いので」
石垣、高岸、斎藤、加藤、澤田......もし、彼らが全員北海道に残っていたら......。道産子球児だけで、日本一になった駒大苫小牧のようなチームになる可能性は十分にある。そのためにも、彼らに選ばれるような、魅力のあるチームづくりが必要だ。残念ながら、今大会も札幌日大、白樺学園ともに初戦敗退に終わった。
初めて駒大苫小牧が優勝した時は、北海道中が大フィーバーになった。「道産子たちでもここまでやれるんだ」と泣いて喜ぶ人であふれた。あれから早や20年。すっかり遠い出来事になり、当時を知る人すら少なくなってきている。
再び道民が熱狂するような夏が来るためにも──。北海道の学校の奮起、レベルアップに期待したい。
著者プロフィール
田尻賢誉 (たじり・まさたか)
1975年、神戸市生まれ。学習院大卒業後、ラジオ局勤務を経てスポーツジャーナリストに。高校野球の徹底した現場取材に定評がある。『明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』『弱者でも勝てる高校野球問題集173』(ベースボール・マガジン社刊)ほか著書多数。講演活動を行なっているほか、音声プラットフォームVoicy(田尻賢誉「タジケンの高校野球弱者が勝つJK」/ Voicy - 音声プラットフォーム)でも毎日配信している。
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