甲子園で苦戦つづく北海道勢 道産子球児たちの道外流出はなぜ止まらない? (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka

【甲子園で勝てるチームを】

 今の道内にそこまで上を目指している人は、はたしてどのくらいいるのだろうか。内地からスカウトに来る強豪校の指導者は、常に甲子園で勝つことやその経験談を語る。ある道内の中学指導者は、次のように語る。

「道内の学校と道外の学校から声がかかったとしたら、ネームバリューのあるほうに行こうとなりますよね。『あの学校から声がかかった』とテンションが上がって、行ってしまうんです」

 専用グラウンドに、野球部寮、練習時間......野球に専念できる環境が道外にはある。山梨学院や健大高崎など全国でも屈指の設備を見せられれば、「ここでやってみたい」と思うのも無理はない。中学の指導者が続ける。

「私らの感覚でいうと、内地はレベルが高いとか暑さが違うとか勝手に思っちゃうところがあるんですが、今の子は何とも思っていない。むしろ、オレはできると思っている。昔なら考えられないですよね。実際、強豪校で活躍している選手がたくさんいるから、できると思えるんでしょう。一緒にプレーしていた選手なら、身近に感じますしね」

 加藤(164センチ)も斎藤(167センチ)も小柄だが、「強豪校でやれる自信があった」と口を揃えた。周囲にも大口を叩き、道外に出て来たからには、やめて帰るようなことはできない。斎藤はこう言っていた。

「うまくいかないことが多かったですけど、覚悟を持って来たので。自分はすごく努力するタイプではないんですけど、あと1勝でセンバツを逃した(昨年秋の関東大会で準々決勝敗退)ことで、このままじゃダメだと思いました。親に恩返ししたい気持ちがあったので」

 道外に出ればお金もかかる。それを認めてもらったのだから、結果で返すしかない。そう思えば、サボりたくてもサボれない。その強い気持ちが、自分を成長させることにつながる。

 道外に出た選手が甲子園に出て活躍する。それを見た道産子球児は「オレも」とあとを追って出ていく。この現状について、札幌日大の森本琢朗監督はこう言った。

「彼らを北海道に残すようなチームにならないといけないですよね。そのためにも、甲子園で勝てるようにならないといけない」

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