【夏の甲子園】広陵の試合の流れを変える控えの「仕事人」たち 背番号10のサウスポー、代打や足のスペシャリストも (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro

【エースを奮い立たせる背番号10】

 熊本工業戦では出番はなかったが、控えには山口大樹がいる。広島大会決勝の広島商業戦、3-1とリードして迎えた8回表に、ツーアウト満塁の場面で高尾をリリーフして勝利を呼び寄せた。

「『絶対に抑えてやる!』という気持ちでマウンドに上がりました。勝ったあとに中井先生に『ナイスピッチング!』と言われて自信がつきました。

 高尾が1年生から試合に出ていたので、自分も『同じところで早く投げたい』と思っていました。悔しい気持ちが、自分が成長できたひとつの要因だと思います」

 背番号10をつけたサウスポーの成長は、高尾にとって刺激になっているはずだ。

「絶対に山口にはマウンドを譲らんぞ、というピッチングでしたね」

 サヨナラ負けのピンチを脱した高尾について、中井監督はそう語った。一方で、キャッチボールをしながら登板に備えていた山口は言う。

「もし高尾が打たれても、『絶対に自分が抑えてやる』という気持ちで準備をしていました。かなり気合が入っていましたね。最後の場面、『投げたい!』という気持ちが強かったです。次の試合で投げる機会があれば、チームに流れを引き寄せるピッチングをしたい」

 大会10日目の8月16日、広陵は東海大相模(神奈川)と対戦する。初戦と同じく厳しい戦いが予想されるが、広陵のベンチには黙々と出番に備える"仕事人"たちがいる。

 プランどおりの展開にならない時こそ、頼りになる男たちが試合の流れを変えるはずだ。

著者プロフィール

  • 元永知宏

    元永知宏 (もとなが・ともひろ)

    1968年、愛媛県生まれ。 立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。 大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。著書に『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)、『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)など多数。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長

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