【夏の甲子園】広陵の試合の流れを変える控えの「仕事人」たち 背番号10のサウスポー、代打や足のスペシャリストも (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro

【どんな場面で出ても気負わない控え選手】

 この2年間、広陵を牽引してきたのは高尾と只石のバッテリーであることは間違いない。しかし、チームを支えるのは控え選手の"準備力"だ。

 中井監督も「みんな大胆に、いい仕事をしてくれる」と感心する。代打の切り札の松村は言う。

「(熊本工業戦のツーベースは)厳しい試合だったので自分が打ってやろうと、その気持ちで打ったヒットです。事前に相手のピッチャーのデータや特徴を頭にしっかりと入れて打席に立ち、甘い球を絶対に逃さないという気持ちで、自分のスイングをするようにしています」

 中井監督は「松村が打てるのは何も考えてないからでしょう(笑)」と言うが、準備がなければ初対戦のピッチャーを打つことはできない。

 9回裏のピンチで伝令に出て、選手たちを鼓舞したのも松村だった。

「中井先生には『堂々と投げろ』と言われたので、それをみんなに伝えて、『これまでやってきたことは正しいからそれを出そう』とみんなに声をかけました。エラーからのピンチでしたが、みんなの気持ちは切り替わっていました」

 9回表に代走で起用された走りのスペシャリストの空は、自分の足に自信を持っている。

「大事なところで代走がある、と思って準備をしていました。どんな場面で出ても気負うことはありません。打球の判断にも自信があります。30m走のタイムは、チームで一番速い3.81秒です。スクイズの場面、得点にはなりませんでしたが、スタンドが沸いたのはわかりました」

 途中出場の選手が力を発揮する秘訣について、中井監督はこう言う。

「これまで一緒に練習をしてきて、子どもたちの一人ひとりの性格もわかるし、それによってかける言葉も変わってきます。今日は監督が、ぶち(広島弁で「とても、すごく」の意味)冴えとったですね(笑)」

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