夏の甲子園で自己最速の152キロ 作新学院・今井達也は魂のピッチングでチームを54年ぶり日本一へと導いた
栃木大会で21イニングスを投げて33奪三振。名門・作新学院の今井達也は、高校最後の夏に覚醒した。2016年夏の第98回大会。甲子園に乗り込んだ今井のピッチングは、さらに勢いを増した。
2016年夏の甲子園で優勝を飾った作新学院・今井達也 photo by Okazawa Katsuroこの記事に関連する写真を見る
【甲子園で自己最速の152キロ】
尽誠学園(香川)との初戦(2回戦)。2回裏に左打者のインハイへの150キロのストレートで1つめの三振を奪うと、つづく右打者に対しては151キロをマークして見逃し三振。3回以降も伸び上がるようなストレートを軸に、スライダー、カットボールを散りばめて三振の山を築く。
9回裏、最後の打者をこの日13個目の三振に仕留め、作新学院が3対0で勝利。
「今井らしい粘り強いピッチングをしてくれた」
そう語ったのは、作新学院の小針崇宏監督だ。
一方の今井は、涼しい顔で自身のピッチングをこう振り返った。
「最初から完封するつもりでした。もう少し緊張すると思っていたんですが、初回から楽しんで投げられました」
打者がわかっていても「打たれないストレートを求めている」とも語っていた。冬場に中距離走をメインとする走り込みを積み重ねて下半身を鍛え、ストレートの球威が増した。同時に、これまで苦しんでいた制球難を克服した。
「甲子園は実力以上のものを出してくれる場所」
見えない力も味方にして、今井は確かな成長を大舞台でも見せつけた。
3回戦の相手は、注目左腕の高橋昂也(現・広島)を擁する花咲徳栄(埼玉)。1回表、先発マウンドに上がった今井は先頭打者と対峙するなかで、自己最速タイとなる152キロをマークした。4回表に1失点、8回表にはソロ本塁打を浴びたが、10個の三振を奪って完投。
「2回裏に味方がビッグイニング(5得点)をつくってくれて、気持ちに余裕が生まれた。自信のある真っすぐで、攻めの姿勢で投げられたのがよかった」
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プロフィール
佐々木亨 (ささき・とおる)
スポーツライター。1974年岩手県生まれ。雑誌編集者を経て独立。著書に『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社文庫)、『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボールマガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)などがある。