夏の甲子園で自己最速の152キロ 作新学院・今井達也は魂のピッチングでチームを54年ぶり日本一へと導いた (2ページ目)
【54年ぶりの日本一達成】
つづく準々決勝では、大会屈指の左腕・早川隆久(現・楽天)がエースの木更津総合(千葉)と対戦。中盤まで木更津総合打線を3安打、無失点に抑える完璧なピッチングを披露。7回裏、先頭打者への四球をきっかけに1点を失うが、この試合も最後までマウンドを守って勝利。
明徳義塾(高知)との準決勝は、先発して5回を2失点。2番手左腕の宇賀神陸玖、3番手右腕の入江大生(現・DeNA)が明徳打線を無失点に抑え、味方打線も大量10点を奪って決勝進出を果たした。
そして1885年創立同士の対決となった北海(南北海道)との決勝戦、今井は甲子園5試合目の先発マウンドに上がった。
2回裏に1点を先制されるも、3回裏には4番打者をアウトコースへの152キロのストレートで見逃し三振に仕留めるなど、ギアを上げていく。
打線も4回に一挙5点を挙げ逆転に成功すると、その後も小刻みに加点。今井も3回以降は危なげないピッチングで北海打線を無失点に抑え、7対1で作新学院が勝利。54年ぶりの日本一を達成し、今井の笑顔が弾けた。
優勝を決めた直後、小針監督は言った。
「選手たちが頑張り抜き、成長してくれた。『うまくなれよ、強くなれよ』と、決勝まで言い続けてきたチーム。選手たちを褒めてやりたいですね」
成長を続けたチームの象徴が、今井だった。
「最後まで気持ちの勝負だった。甲子園では、1試合1試合、決勝戦だと思って投げました」
その魂のピッチングは、プロ野球の世界で戦う今も変わらない。
今井達也(いまい・たつや)/1998年5月9日、栃木県出身。作新学院3年時の2016年、圧巻のピッチングで夏の甲子園を制覇。大会後、U−18アジア選手権でも侍ジャパンのエースとして優勝に貢献した。同年秋、ドラフト1位で西武から指名され入団。プロ3年目の19年にチームトップの22試合に先発登板するなど頭角を現すと、21年は8勝をマーク。23年は自身初の2ケタ勝利となる10勝を挙げた。
著者プロフィール
佐々木亨 (ささき・とおる)
スポーツライター。1974年岩手県生まれ。雑誌編集者を経て独立。著書に『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社文庫)、『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボールマガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)などがある。
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