ドラフト指名漏れ→独立リーグ→現役引退→中古車販売→NPBへ最後の挑戦 落合秀市「人生で一番野球漬け」 (4ページ目)
入団時に141キロだった落合の最高球速は、トレーニングを積んだ今は最速149キロまで向上している。落合は感慨を込めて、こう語る。
「がんばった分、結果が目に見えているので楽しいです」
それでも、3年間のブランクを埋めるのは容易ではない。「ブランクを感じますか?」という質問に、落合は「めっちゃ感じます」と答えてこう続けた。
「その日その日の調子がバラバラすぎて、まずは安定させることが大事だと感じます。悪いなりに抑えるピッチングをしたいですね」
完璧に抑え込んだ日があったかと思えば、1イニングも投げきれない乱調の日もある。落合は悪戦苦闘を重ねながら、実戦経験を積んでいる。
【人生で一番野球漬け】
高知での新生活について尋ねると、落合は「カツオのタタキがおいしいです」と笑いつつ、こう続けた。
「とりあえず今は、NPBに行くことしか考えていません。人生で一番野球漬けですね」
落合の笑顔を見て、私は「こんなふうに笑う子だったかな?」という思いを抱いた。今までの落合は、よくも悪くも人のことを心の底では信用していない雰囲気があった。だが、目の前の落合の無垢な笑顔には、そんなムードが微塵も見られなかった。
思わず、「変わったね」という感想が口をついた。すると、落合は「めっちゃいろんな人に『大人になったね』って言われます」と答えた。迷惑をかけ続けてきた米原監督に対する思いを聞くと、落合は「お世話をしてもらったので、NPBに行くところを見せたいです」と神妙に語った。
「今さら遅い」という考え方もあるだろう。落合自身、悔いも抱えている。だが、前を向いて戦うしかない。最後に落合はこんな言葉を口にした。
「あの時から今くらいの気持ちで頑張れていたらな......と思うことはあります。でも、いろんな経験もできたので。もう一回、野球を頑張ろうと思います」
後日、和歌山東の米原監督に会う機会があった。開口一番、「高知に行ってきました」と告げると、米原監督は「いい顔になっとったでしょう?」と答えた。こちらの感想をピタリと言い当てられたような気がした。
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