ドラフト指名漏れ→独立リーグ→現役引退→中古車販売→NPBへ最後の挑戦 落合秀市「人生で一番野球漬け」 (2ページ目)
同じく独立リーグの四国アイランドリーグplusやルートインBCリーグを選ばなかった理由を聞くと、落合はこともなげにこう答えた。
「だってイヤじゃないですか、遠いのって」
和歌山東の米原監督は、いつも落合の身を案じつつ厳しい言葉を口にしていた。落合が独立リーグ入りした直後には、こんな苦言を呈している。
「『プロに行きたい』と言ってるのも、まだほんまに頑張ろうと思って言ってるわけじゃないですから。『お金がほしい』という目的が第一にある。それは別に悪いことじゃないけど、一時(いっとき)の金を目指してやってるだけ。本当に野球が好きやったら、続けるやろうけど」
入団直後からコロナ禍の影響を受け、球団の活動がストップする。落合は慣れない自炊やアルバイトに取り組みながらプレーしたが、結果は残せなかった。2年目は同一リーグ内の06BULLSに移籍したが、6月には退団している。
【独立リーグ退団からの空白の3年】
あれから3年近くが経ち、落合の高知ファイティングドッグスへの入団が発表された。
落合はなぜ野球界に戻ってきたのか。5月下旬、私は高知市営野球場へと向かった。球場入口の関係者受付で記帳していると、ちょうど落合が通りかかった。
「お久しぶりです」
感情は読み取りにくかったが、不思議と気まずさはない。ユニホーム姿を見られた感慨はあったものの、ほんの数カ月前に会ったばかりのような感覚があった。
球場の一室で落合と膝を突き合わせ、まずは高知に入団した理由から聞いた。
「野球から何年も離れてみて、やっぱり野球が好きというのと、野球で頑張って上に行きたいという気持ちが強くなったので高知に来させてもらいました」
3年前、落合は「野球に対して完全に気持ちが切れてしまいました」とボールを置いた。野球から離れて、何をしていたのか。
「最初に建設業をやって、次に中古車販売の会社で働いていました。中古車の会社に行ったのは、いつか自分でクルマ屋さんをやりたいと思ったからで」
だが、中古車販売店で働いた落合は、「職場のおっちゃん」と呼ぶ男性からこんな言葉をかけられたという。
「クルマ屋は歳をとってからでもできる。でも、野球は若い時しかできないんやから、野球をやったら?」
2 / 5