「北東北の雄」富士大が狙う大学日本一 監督が見出した無名の逸材がドラフト候補に成長 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 1年生だった昨年は規定のため公式戦出場はできなかったが、2024年度から解禁。今のところ二塁手か指名打者での起用が有力視されている。昨年は練習や紅白戦で技術を磨くなかで、近年にない手応えを得たという。

「社会人ではヒットを狙って上から叩くような打ち方になっていたのが、富士大で安田(慎太郎)監督からボールに対してタテにバットを入れる打ち方を教わって、いい感じにフィットしてきました。ウエイトトレーニングにも力を入れている大学なので、筋力も上がっています」

 年下だらけの環境にも、「みんな敬意を払ってくれるし、野球に対する意識が高いので『負けてられないな』と思います」とすっかりなじんでいる。高山の加入で、富士大打線はますます厚みを増しそうだ。

【ケガなく野球を続けてほしい】

 投手陣では、今年のドラフト上位候補に挙がる左腕・佐藤柳之介(東陵)が大黒柱になる。好球質のストレートとカーブなど精度の高い変化球、正確なコントロールを武器にする「勝てる左腕」だ。

 しかし、昨秋の明治神宮大会準決勝の青山学院大戦で佐藤は登板を回避している。3安打完封勝利を挙げた上武大戦から中2日空いており、1点を争うクロスゲームにもかかわらずリリーフ登板すらなかった。

 後日、佐藤に聞いてみると、「同点になったら投げさせてくださいと安田監督に直訴したのですが、却下されました」と苦笑交じりに明かした。あらためて安田監督に聞くと、「1ミリも投げさせるつもりはありませんでした」と断言した。

「試合前から言っていました。投げるとすれば決勝戦で、それも当日のコンディションがよければ。誰かを壊してでも日本一になりたいとは思わないですし、選手にはケガなく上(プロ)で野球をやってもらいたいですから」

 他大学の監督からは「なんで佐藤を投げさせないんだ」「理解できない」という声が寄せられたという。それでも、安田監督は信念を曲げなかった。

「選手は『自分はケガしない』と思っているんですよ。でも、ケガしてからでは遅いんです。プロに行きたいからウチに来ている選手もいるので、一時の感情で目的を見失って取り返しのつかないことにならないようにしてやりたいんです」

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