山本昌がセンバツで力投した12投手を解説 中日で一緒にプレーした投手の息子の評価は? (11ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

決勝の報徳学園に先発し、8回2失点の好投でチームを初優勝に導いた健大高崎の石垣元気 photo by Ohtomo Yoshiyuki決勝の報徳学園に先発し、8回2失点の好投でチームを初優勝に導いた健大高崎の石垣元気 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る石垣元気(健大高崎2年/176センチ・71キロ/右投左打)

コンパクトで力感のないフォームですが、腕の振りが鋭くてコンスタントに140キロを超えてくるから打者は差し込まれてしまいます。そして何よりもスライダーのキレが抜群。ラインもきれいに出せていてコントロールもいいし、野球センスのある投手なのだろうなと感じました。2年生とはいえ、二本柱を組む佐藤龍月くんとともに高校生では攻略するのは難しい投手でしょう。このまま成長していけば、プロに入ってリリーフとして活躍するイメージが湧いてきます。これから体をつくってスケール感を養成して、ひと回りもふた回りも大きな投手に成長してもらいたいです。

同級生の石垣元気とともにセンバツ優勝へと導いた健大高崎・佐藤龍月 photo by Ohtomo Yoshiyuki同級生の石垣元気とともにセンバツ優勝へと導いた健大高崎・佐藤龍月 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る佐藤龍月(健大高崎2年/173センチ・70キロ/左投左打)

石垣くんとともに春のセンバツ優勝へと導いた活躍は見事でした。まず目に留まるのは、強烈なクロスステップ。マウンドから向かって左方向へと右足を踏み出し、対角線に投げ込む角度が特徴的でした。右打者のインコース、左打者のアウトコースへと突き刺さるボールは打ちづらいはずです。2年生にして特殊性を持ち、球速もあるのですから結果を残せるのもうなずけます。クロスステップする分、体をクルッと回して投げるのは大変でしょうが、捕手に向かって伸びていく球質を追求してもらいたいです。

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 今回12投手の投球をチェックさせてもらい、あらためて実感したことがあります。それは「最近の投手の技術レベルは確実に高くなっている」ということ。技術に関する情報があふれているし、勉強熱心な指導者の方々の力も大きいのでしょうね。逆に言えば、技術に関する知識をつけなければ勝てない時代がきているのだと感じます。

 高い技術を身につけられれば故障が少なくなり、練習量を減らすことなく順調に成長できます。私も母校の日大藤沢で臨時コーチをしていますが、今の高校生は短期間に急激に成長して驚かされます。

 これから夏にかけて、今回分析させてもらった投手が成長してくれることを願っています。そして、全国には隠れた逸材がたくさんいるはず。新たな好投手と出会えることを楽しみにしています。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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