派手さはないけど野球の面白さが凝縮 センバツ出場の球児が披露した「これぞ好プレー」3選 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

「サードの中辻(秀太/2年)には『三塁ランナーがスタートをきったら大声を出せ』と言ってありました。中辻の声が聞こえてきたので、田中さんなら外してくるだろうなと準備できていました」

 チームとしてスクイズを防ぐための周到さ。京都外大西は守備の乱れもあって1対7で敗れたとはいえ、さすが昨秋の近畿大会準優勝校だとうならされた。

 それにしても、心の準備はしているとはいっても140キロ近いウエストボールを座った状態から捕らなければならない下曽山は、難儀したことだろう。そう伝えると、下曽山は苦笑を浮かべてこう答えた。

「これまで何回も外してきたんですけど、いざ甲子園で......となるとヤバいです」

神村学園戦に先発するも5回4失点と本来の力を発揮できなかた作新学院・小川哲平 photo by Ohtomo Yoshiyuki神村学園戦に先発するも5回4失点と本来の力を発揮できなかた作新学院・小川哲平 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る

【大会屈指の強打者を新球で三振に】

 昨秋の明治神宮大会準優勝だった作新学院(栃木)は、センバツ初戦で強打の神村学園(鹿児島)に3対6で敗戦。大会屈指の本格派右腕として注目されたエースの小川哲平は、内野守備の綻びも絡んで5回4失点に終わった。

 それでも、昨秋よりも明らかに球威が向上したストレートは目を引いた。小川とバッテリーを組む岩出純もこのように証言する。

「秋とスピードは変わってないんですけど、ボールを受けていて重さが変わりました。冬を越えて、どんどん強さが出てきています」

 神村学園の主砲である左打者・正林輝大との勝負は見応えがあった。1打席目は小川のウイニングショットであるカットボールをインコースに突き刺し、見逃し三振。2打席目はそのカットボールが甘く入ったところを正林が見逃さず、ライトスタンドに放り込んだ。

 そして3打席目、二死二塁のピンチで正林を左打席に迎えた場面で小川が勝負に出る。カウント3ボール2ストライクから、112キロの外角へと逃げていく変化球で空振り三振を奪ったのだ。

 大会アンケート資料によると、小川の球種はストレート、カットボール、カーブの3種類。だが、この大事な場面で、小川は新球であるチェンジアップを投じたのだ。

「チェンジアップは冬に練習して、新しい武器になりました。カウント3ー2でしたけど、割り切って覚悟を決めていこうと投げました」

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