派手さはないけど野球の面白さが凝縮 センバツ出場の球児が披露した「これぞ好プレー」3選 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 相手にとってデータのない球種で賭けに出て、見事に三振を奪った。チームが敗れた以上、小川にとっては不本意な結果だっただろうが、大きな糧になるのは間違いない。今まで以上の球威とカットボールに続く決め球を手に入れ、小川は投手としてのステージを一段上がっている。

軽快な守備でチームを盛り上げた宇治山田商の伊藤大惺 photo by Ohtomo Yoshiyuki軽快な守備でチームを盛り上げた宇治山田商の伊藤大惺 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る

【気配を殺す、忍者のような動き】

 16年ぶりの出場となった宇治山田商(三重)は初戦で東海大福岡に5対4で競り勝つなど、存在感を見せた。試合前のシートノックから機敏な動きが際立っていたのが、遊撃手の伊藤大惺(たいせい)だ。

 身長167センチ、体重57キロの小兵ながら、足がよく動き守備範囲が広い。二塁ベース付近のゴロでも正面に入ってさばき、アウトにしてしまう。伊藤は「いいバッターは打つ前から動き出しています」と語った。

「変化球で2ストライク目を取ってからストレートのサインが出たので、(左打者が)少し振り遅れるかなと思って、打つ前から左へ動き始めていました。正面で捕れたのはたまたまですけど、こういう部分は普段の練習からこだわっています」

 そんな伊藤が大きな仕事をやってのけたのは、東海大福岡戦の3回裏の守備だった。3安打を集中され1対1の同点に追いつかれ、なおも一死一、二塁のピンチで打者は4番の藤本塁守(るいす)。東海大福岡の押せ押せムードのなか、遊撃手の伊藤がササッと二塁ベースに入る。タイミングよく投手の加古真大(2年)が二塁牽制を投げ、二塁走者をタッチアウトにした。

 気配を殺して素早く二塁ベースに入る伊藤は、まるで忍者のようだった。伊藤は「試合序盤に二塁牽制で刺すことを狙っていた」と明かす。

「二塁ランナー(宗翔馬)の足が速いデータはありましたし、リードが大きかったので。1回刺しにいく牽制をしたいなと思っていました。二塁牽制は冬場にこだわって練習してきて、攻めた守備をしたいなと。あれで流れが変わりましたね」

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