神宮大会で見つけたふたりの好投手「江川卓2世」と「最新機器を活用する大型右腕」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

青森山田のエース・関浩一郎 photo by Kikuchi Takahiro青森山田のエース・関浩一郎 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る

関浩一郎(青森山田/2年/投手/187センチ・81キロ/右投右打)

 近年の球界のトレンドを考えると、こんな投手がプロ側から求められるのかもしれない。関浩一郎の投球を見ながら、そんなことが頭に浮かんだ。

 関は187センチの長身右腕だが、明治神宮大会初戦の星稜戦での球速は常時135キロ前後。神宮球場の硬いマウンドとの相性も悪く、7回3失点で敗戦投手になっている。試合後、関は「今まで努力してきたことがひとつもできませんでした」と悔しさを滲ませた。

 それでも、豊かな才能の一端は見せてくれた。まず、大型右腕ながらコントロールが優れていることだ。関は言う。

「自分はストレートで押していくというより、バランスやコントロールで試合をつくっていくタイプなので。野球を始めた頃からこのスタイルです」

 今年のドラフト会議全体を見渡した時、コントロールがアバウトな剛腕タイプよりも、コントロールの安定したバランス型のほうが好評価を受けた印象がある。動作解析やトレーニングが発達した今、プロの現場では「スピードは後天的に高められる」という認識に変わっている。むしろコントロールが悪い投手を改善させるほうが難しいという考え方もある。

 関はこうした時流にマッチした存在と言えるかもしれない。驚くような球速はなくとも、フォームに変なクセはなく、打者の手元で伸びる球質も光る。高校入学後から4センチ伸びたという身長も、本人によると「まだ少しずつ伸び続けています」と発展途上だ。

 また、「普段からラプソード(弾道測定機)を使って、ボールの回転効率を大事にしています」と語るように、最新機器を活用してレベルアップに役立てているのも現代的だ。

「理想は高卒でプロに行くこと」と語る未完の大器は、来春にどんな姿を見せてくれるのか。投手としてひと回り大きくなった姿を見せられれば、関の言葉は現実味を帯びてくる。

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プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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