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三重・昴学園は第2の『下剋上球児』を実現できるか 南雲脩司のモデルとなった熱血教師と因縁のライバルが強力タッグ (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

補食の納豆ご飯を頬張る青木大斗主将補食の納豆ご飯を頬張る青木大斗主将この記事に関連する写真を見る それでも、冨山は「冷静に見ればまだまだ」とチームを分析する。

「白山の子たちは負けるなかで、どんどんたくましくなっていった。昴学園は監督が東くんになったからといっても、まだ時間が経っていない。あとは辛抱せなしゃあないでしょう。できやんだら、できるまで練習するしかないです」

 選手を見ていると、「また監督をしたい」という思いは湧いてこないのか。そう尋ねると、冨山は豪快に笑ってこう答えた。

「今のほうが面白いんですよ。東くんにブレーキをかけたり、『こいつのほうがええぞ』と言ったりするほうが面白いし、元気をもらえる。この立場になってみて、チームを客観的に見られるようになったし。来年70になるけど、頭は今が一番冴えてるで」

『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)を原案としたドラマが放送され、三重県内ではその話題で持ちきりだ。冨山は部員に対して厳しく接する東に、冗談めかしてこんな助言を送っているという。

「みんな(鈴木亮平が演じる)南雲先生のイメージで来るやろうから、ちょっと言動を考えなあかんぞ」

 日が暮れると、あたりに街灯がない昴学園では夜空に浮かぶ星が鮮明に見える。昴学園の校名は牡牛座にあるプレアデス星団の和名「昴」にちなんでいる。1995年の開校式には歌手の谷村新司氏が訪れ、自身の代表曲である『昴』をアカペラで歌ったという逸話が残っている。

 いつか昴が甲子園で輝く日がくることを信じて──。自然豊かな大台町で『下剋上球児』の第二章が始まっている。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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