三重・昴学園は第2の『下剋上球児』を実現できるか 南雲脩司のモデルとなった熱血教師と因縁のライバルが強力タッグ (2ページ目)
翌夏を最後に冨山は松阪商の監督を勇退。その後は外部コーチとして松阪商や白山の指導にあたった。冨山は白山町に自宅があり、よく白山のグラウンドに顔を出していたのだ。当時、冨山は「東くんとは野球に対する考え方も似てるしな」と語っていた。
今年4月に東が昴学園に異動すると、冨山もまた野球部のコーチに就任した。2018年夏の三重大会決勝戦を戦った両監督が今やタッグを組み、深い森に覆われた昴学園で甲子園を目指しているのだ。
【秋季大会ベスト16と躍進】
冨山にとって昴学園がある大台町は故郷でもある。現在は廃校になった宮川高校を卒業しており、今も実家が大台町にある。
「生徒が授業を受けている午前中は、宮川の川べりで椅子に座って本を読んでるんや。頑張ってる選手を見ていると、元気をもらえますよ」
前編でも触れたとおり、昴学園は全国唯一の公立で全寮制の総合学科高校。1学年あたりの定員は80名と少ないものの、寮生活を通して強化できるメリットがある。
県外からの越境入学生も多いとはいえ、そのレベルはまだ高いとは言えない。主将で正捕手を務める2年生の青木大斗は愛知・知多東浦シニアの出身だが、中学時代は2番手捕手だった。青木は「今も昔も野球の技術に自信はありません」と苦笑する。
昴学園の部員の気質に関して、冨山はこんな感想を漏らした。
「まだまだ白山高校のほうが野球のうまい子は多い。昴の子はまだ気持ちの爆発力がないというのかな。でも、『寮に入って、野球を頑張りたい』という覚悟を持った子が多いから、ひと冬越えたら戦えるようになると思います」
今年に入って、昴学園は着実に成果を上げている。前任の高橋賢が監督を務めた今春は地区予選を勝ち上がり、開校以来初の県大会出場。今夏は三重大会で17年ぶりの勝利を挙げた。監督が東に交代した今秋は地区予選で2位と躍進。県大会では2回戦で宇治山田商に2対9で敗戦したものの、ベスト16に進出した。エースの河田虎優希(こうき)をはじめ1年生の主力選手も多く、地元の期待も高まっている。
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