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文星芸大付・黒﨑翔太が明かす「フライング・ガッツポーズ」の舞台裏 座右の銘は「早まるな」になった (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

【プロ注目の強肩捕手】

 フライング・ガッツポーズといえば、文星芸大付にまつわる先駆者がいる。元ヤクルト監督の真中満が、2015年のドラフト会議で当たりくじと勘違いしてガッツポーズした事件があった。真中は文星芸大付の前身・宇都宮学園のOBである。

 大先輩の「やらかし」を知っているかと尋ねると、複雑そうな苦笑を浮かべた黒﨑からこんな答えが返ってきた。

「テレビで古田(敦也)さんから『真中さんもOBだから文星のDNAだ』とか言われて......。でも、ちょっと真中さんに近づけてうれしい思いもありました」

 フライング・ガッツポーズばかりをクローズアップしてしまったが、そもそも黒﨑はプロスカウトも注目する好選手である。本人がもっとも自信を持つスローイングは遠投115メートル、二塁送球のベストタイム1秒74というプロでも叩き出すのが難しい数値だ。

 文星芸大付に進学したのは、社会人の名門・三菱ふそう川崎で捕手として活躍した高根澤監督の指導を受けるため。高根澤監督から学んだ「捕手としてもっとも大事なこと」を聞くと、黒﨑は目を輝かせてこう答えた。

「ピッチャーへの気遣いです。ファウルのあとに球審から新球を受けとった時は、両手でしっかり拭いてピッチャーに渡したり、ホームベースが汚れていれば自分で土を払ったり。中学時代は気遣いも配球も全然できてなかったので、監督から教わりました。練習試合で監督にサインを出してもらったらバンバン三振がとれて、『すごいな』と思って。勉強して、今では自分でサインを出せるようになりました」

 投手のタイプに応じて、サインを出すタイミングや間合いもコントロールしている。たとえば、エースの澁谷はテンポよく投げ込みたいタイプのため、捕球したら両ヒザを着いたまま即座に返球する。背番号10の右腕・工藤逞(てい)の場合は「おっとりマイペース」という本人の性質を考え、あえて間(ま)を取って返球しているという。

 フライング・ガッツポーズの時にマウンドにいた堀江の場合は、「気持ちが弱いところがあるので、どうやって相手に立ち向かわせるかを考えている」という。その強い思いがフライングとなって発露したというのは、好意的に解釈しすぎだろうか。

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