文星芸大付・黒﨑翔太が明かす「フライング・ガッツポーズ」の舞台裏 座右の銘は「早まるな」になった (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 あらためてフライング・ガッツポーズが飛び出した要因について、黒﨑は「自分の狙いどおりの配球で抑えられたと思って......」と白状する。

「去年の秋から夏にかけて、配球についてずっと悩んで、夜中まで勉強してきたんです。作新で一番いいバッターの磯くんをインコースのストレートで抑えられたと思って、うれしくてガッツポーズをしてしまいました」

 文星芸大付のおおらかな環境もまた、黒﨑という個性を育んできた。高根澤監督はフライング・ガッツポーズをした黒﨑を叱った一方で、「あれはあれで高校生らしい」とも語っている。

「ウチは選手を押さえつけるガチガチのスタイルではなくて、練習中から笑い声が聞こえるアットホームなスタイルですから。もちろん、締めるべきところは締めないといけませんが、私自身、恩師の上野(武志)先生がそういう方針だったので」

「同じ捕手として、黒﨑くんの育成には手を焼きましたか?」と聞くと、高根澤監督は「見ればわかるじゃないですか」と冗談めかしたあと、こう続けた。

「よくできる日もあれば、ダメな日もある。でも、そんなムラがあるのが高校生らしいじゃないですか」

【逆転勝利で初戦突破】

 8月11日、甲子園初戦・宮崎学園戦を迎えた黒﨑は、栃木大会決勝の球審から受けた「早まるな」という言葉を胸に刻んでいた。

 2ストライクから際どいコースにボールが来ても、球審のコールを聞くまではミットを動かさずにじっと待った。

「(球審の)コールを聞いてからガッツポーズをするようにしたんです。あの決勝戦が教訓になっていました」

 とはいえ、試合では熱い思いが空回りした。捕手としては2つのパスボールを犯し、打者としては4打席目を終えた時点でノーヒット。6回裏には二死一、三塁の場面で三塁走者としてダブルスチールを敢行。だが、相手捕手が二塁に投げる前に黒﨑がスタートしてしまい、タッチアウトに。チームは4点のビハインドを追っていただけに、痛いボーンヘッドに見えた。

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