聖光学院は「中学時代の実績は関係ない」というスタンス 無名だった3人の成り上がり物語 (3ページ目)
昨年から聖光学院の中軸を担う三好元気この記事に関連する写真を見る「中学は本当に悔しい思いをしたんですけど、やっぱり足りないことも多くて。だから、チームを引退してから高校に入るまで『もう1回、自分をつくり直そう』って。この期間って正直、そこまで追い込んで練習する人っていないから、その間に差を埋めるというか......」
三好の取り組みは中学生の域を超えていた。毎日のようにティーバッティングなどで打ち込む。シニア時代は「体のサイズが小さかった」と省(かえり)みて、ウエイトトレーニングを精力的に行ない、食事の改善にも着手した。朝は卵とバナナといったタンパク質を多く摂り、昼はサラダを増やし、夜は肉や炭水化物をメインとする。それは、親から紹介されたトレーナーに管理してもらうほど徹底されていた。
三好の双子の弟で、この過程をつぶさに見てきた力生が兄の覚悟を伝える。
「元気は自分を持っているので。中学で試合に出られなかった悔しさっていうのを、この時期からもそうですし、今もすごくぶつけているなって思います」
三好元気が高校で頭角を現すのは早かった。1年の秋から4番に座り、昨夏の甲子園では初戦の日大三戦でホームランを放つなどチームで不動の存在となった。
中学時代に描いていた高校での自分。理想に近づけたか尋ねると、三好は「う〜ん」と笑いながら首を傾げ、こう答えた。
「それはまだわかりませんけど、『負けたくない』って気持ちは出せていると思います。なんか技術っていうより、中学時代から支えてくれている親だったり、聖光学院の指導者の方たちだったり、高校でも一緒の力生や仲間だったり。今の自分があるのは、そういう人たちのおかげかなって思います」
聖光学院は、監督の斎藤智也が「野球がうまい選手より、心が強い人間を求めている」と掲げているように、人としての成長を重要視する。三好はまさに、チームの根幹を体現し、のし上がった選手と言える。
「実力じゃなくて心です。聖光学院は人間性を見てくれるんです」
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