双子バッテリーの野望　日大東北・堀米翔太＆涼太は「後輩に甲子園の景色を見せたい」 (2ページ目)

　この試合で二度マウンドに上がったが、計１イニングで４安打、２四球、３失点。明らかに不調だった涼太は、当時の心情をボソッと漏らしたことがあった。

「正直、少しイップス気味で、マウンドに上がるのも嫌なくらいでした」

　不安定な涼太をマウンドに上げたのは、吉田監督にとっても賭けだった。

「本当は去年の夏のメンバーに入れるかどうかも悩んだくらいでした。ただ、甲子園で投げきってくれた経験と度胸を買ったのですが......。結果的に不調を乗り越えるだけの気持ちもフィジカルもなかったわけですけど、あの経験は涼太をさらに大きくさせてくれたエネルギー源になったと思います」

【背番号１、マウンドへの想い】

　蹉跌を経て、涼太は一からピッチャーとしての自分をつくり上げた。基礎である体づくりに重点を置く。バーベルを担いでの片足スクワットなどで強靭な下半身をつくり上げていった。原点に立ち返ることで「イップス気味だった時は上半身の力に頼りすぎていたんだ」と省みることができたし、ピッチングフォームを下半身から上半身へと連動させることを意識することで、ストレートの強度も増した。

　なにより、不安定なパフォーマンスが続いたとしても動じなくなった。今年春の福島大会でのことだ。まだ本調子ではなく、投手陣の底上げを目論む吉田監督から「背番号１」を与えることを逡巡していると伝えられると、自らの想いをこう明示した。

「メンバーから外れる３年生の気持ちを考えれば、何番をつけてもやれるだけのことを精いっぱい出すだけです。ただ、甲子園で投げた経験があるのはこのチームでは自分だけですし、１番へのこだわりは誰よりもあります」

　やっぱり、涼太がうちのエースだ──。吉田監督は決意を固めたという。

「私の想像をはるかに超える答えをしてくれたんです。だから、監督である自分が『背番号１はおまえだ』って全面に出したほうが、さらなる力を発揮してくれるんじゃないかと思いました」

　ストレートの最速は134キロと決して速いわけではない。だが、右バッターの胸元に食い込むクロスファイヤーにカットボール、スライダー、ツーシーム、チェンジアップは全球種ベース上で勝負できるほど精度が高い。