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花巻東・佐々木麟太郎が先輩・大谷翔平の姿から学んだこと 最後の夏への思い

  • 佐々木亨●文・写真 text & photo by Sasaki Toru

 夏を間近に控えた6月、花巻東(岩手)の佐々木麟太郎はたしかな手ごたえを口にした。

「春先に比べて、打撃の状態は上がってきていると思います。今は上がってきている状態をキープしている状況です」

 穏やかな表情の裏で、夏の岩手大会に向けて気持ちを昂らせているのがよく伝わってくる。

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【前人未到の高校通算140本塁打】

 高校生離れした筋量と柔軟性を備えた体から放たれるビッグアーチを一目見れば、その能力に惹き込まれる。高校3年生となった今年、麟太郎は「体の出力をバットにしっかり伝えること」を最大のテーマにして、打撃の精度を高めてきた。

 6月3、4日に行なわれた愛知県高野連主催の招待試合では、東邦、愛工大名電、至学館といった強豪校と対戦し、場外へ消える4本のアーチを放った。そのうちカーブをとらえた打席があったのだが、そこに麟太郎の成長のあとを垣間見た。

「一瞬、体勢を崩されたかなと思いましたし、泳いでいるようにも見えたと思いますが、頭の位置、体の軸はブレていなかったので、あそこまで打球が伸びたと思います」

 打席でのメンタルのコントロールという面でも、「しっかりできた」と語り、自身も心技体における充実を感じとった。

 麟太郎の言葉に熱がこもる。

「たとえ打球角度は低くても、打球速度と体からの出力でどんな球でもスタンドに放り込めることがテーマでもあります。いま、それを体現できていると感じています」

 今年に入ってから「さらに飛距離が伸びた」と語り、高校通算本塁打数は歴代最多となる140本に達した(7月12日現在)。そんな麟太郎にとっての打撃とは何か。

「もちろん、守備などの精度をさらに上げていかなければいけないと思いますが、ここからはバッティングで勝負していくべきだと思っています。自分の個性でもある打撃を最大限に、いい状態のままで高校最後の夏に挑みたいと思っています」

 いかなる状況でも「自分としてのベストを尽くす」ことを心がける。それは高校に入学してから変わらない。その結果として、ホームランになればパーフェクトと言えるだろう。ただ、毎打席イメージどおりの結果が出るとは限らない。たとえ最高の結果に結びつかなくても、「ベストなスイングはできる」という自負がある。

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著者プロフィール

  • 佐々木亨

    佐々木亨 (ささき・とおる)

    スポーツライター。1974年岩手県生まれ。雑誌編集者を経て独立。著書に『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社文庫)、『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボールマガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)などがある。

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