「医師か、プロ野球か」悩めるドラフト候補、三重・高田高校の中山勝暁が心境を吐露 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

【苦悩に満ちた毎日】

 一見すると理想的な「文武両道」に見えるが、中山本人にとっては苦悩に満ちた毎日だった。

 6年制のクラスは受験対策のため特別なカリキュラムが組まれており、7限授業の日も多い。時には野球部の練習に遅れて参加し、週2回は練習後に学習塾へと通う。「どちらかに絞りたいと考えた時期はありませんか?」と尋ねると、中山は「日々そんな感じで悩んでます」と答えた。

「人間なんで、調子のいい時は『どっちも頑張ろう』となるんですけど、どちらかがうまくいかないと『勉強しやんと(しないと)やばくないか?』と思ってしまって......。悩みまくってます」

 中山は生来アクティブではなく、家で寝転がって過ごすのが好きなタイプである。勉強からも野球からも離れ、のんびり過ごしたくなる日もある。

「お父さんは自分に厳しい人なんで、一切妥協をしないんです。『今日はきついからやめよう』じゃなく、自分に足りないことをやる。父ながら尊敬するところですね」

 完璧に見える父と比べ、だらしない自分自身が情けない。そんな自己嫌悪の繰り返しだという。中山の学業成績は理系クラスの平均程度と悪くなく、投手としてもプロスカウトが注目するほどの存在になっている。それでも、中山のなかではハイレベルな文武両道をこなせている実感はない。

 今後、医学部を目指すのか、それとも本格的に野球の道を歩むのか。その問いに、中山は「う〜ん」とうなった。

「本当に迷っているんですけど、この夏にかけて野球と勉強でどれくらい伸びるかで決めようと考えています。こればかりはやってみないとわからないので」

 まずは野球をやりきってから、医師を目指すという選択肢もあるだろう。過去にはMLBやNPBで活躍したのち、医師になったゲイル・ホプキンス(元広島ほか)のような先例もある。近年では、プロ引退後に医学部に入学した寺田光輝(元DeNA)が話題になった。だが、そんな偉大な前例も中山の表情を晴らす材料にはならない。

「まずは野球をやってから、ということもよく言われるんですけど、うーん......。やっぱり、どちらも成長したいという思いが強くあって。まだなんとも言えないですね」

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