全日本大学選手権で存在感を示した好投手3人 ポテンシャルは一級品、ドラフトで上位指名も... (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 この日、渡部に2打数2安打と打ち込まれていた滝田だが、渾身の投球でファーストゴロに打ちとる。ところが、滝田の一塁へのベースカバーが遅い。俊足の渡部が先に一塁ベースを駆け抜け、星槎道都大は逆転を許す。次打者に押し出し四球を与えたところで、滝田はマウンドを降りた。

 1対8の7回コールド負け。結果的にフィールディングの拙さから大敗を喫したものの、打ち込まれての敗戦ではなかった。二宮監督に「滝田くんは力を出してくれましたか。それとも、こんなもんじゃないという思いですか?」と聞くと、いたずらっ子のように笑った二宮監督からこんな答えが返ってきた。

「こんなもんですよ。でも、まあいいボールは投げていました。あとはもう少し変化球でストライクをとれるようになるといいですよね」

 ポテンシャルを考えると、ドラフト上位指名を受けても何ら不思議ではない。北の怪腕・滝田一希はまだまだ発展途上なのだ。

仙台大に敗れたが自己最速となる153キロをマークした東日本国際大の大山凌仙台大に敗れたが自己最速となる153キロをマークした東日本国際大の大山凌この記事に関連する写真を見る

大山凌(東日本国際大学4年/180センチ・80キロ/右投右打/白鷗大足利高)

「プロに行きたいと考えているので、今日はアピールするチャンスだったんですけど......まだまだ実力不足でした」

 試合後、意気消沈した様子でそう語ったのは、東日本国際大のエース右腕・大山凌だった。仙台大学を相手に5回まで無失点と粘投したものの、6回に3失点を喫して降板。それでも、神宮球場で自己最速を2キロ更新する153キロをマークし、インパクトを残した。

 バランスのいいスリークオーターから、ストレート、カーブ、スライダー、カットボール、ツーシーム、スプリット、チェンジアップと多彩な球種による総合力で抑えるタイプ。

 だが、この日は決め球の精度に苦慮した。「仙台大は大振りせず、ミートしてくるチーム」と警戒して慎重に攻めていたが、かえって「考えすぎてしまった」と悪い方向に作用した。決め球であるスプリットは「決まったり、決まらなかったり」と不安定だった。

 被安打は3だったものの、与四死球は7。大山はこんな悔いを口にする。

「あれだけ四死球を出していたら結局ヒットと変わらないので。もっといいピッチングをしたかったです」

 昨秋に痛めた右ヒジは完治しており、体調面に不安はない。スケールというよりは技術面でアピールするタイプだけに、秋に向けて求められるのは結果だ。念願のドラフト指名のため、大山がどんなラストスパートをかけるか目が離せない。

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