埋もれていた二刀流の超逸材 太成学院大・田中大聖は「バリバリの孤独」でも最速153キロで俊足強打 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

「ほとんど毎日同じメニューをやっています。体のどこが張っているかを確認して、張りがない部分には少し刺激を入れたりして。自分には技術的なセンスはないので、こうした部分で考えないと上にはいけないと思っています」

 だが、大事な今春のシーズンに田中を待ち受けていたのは、厳しい現実だった。

 昨秋のリーグ戦では10試合で打率.292、4本塁打、9盗塁と成績を残したが、今春は徹底マークにあった。常にストライクゾーンのギリギリのコースを攻められ、四死球は12個。極端なシフトを敷かれ、長打性の打球はことごとく守備網に絡めとられた。その結果、10試合で打率.107、0本塁打、5盗塁と無残な成績に終わっている。

 田中は言う。

「マークされるなかで結果を残せなかった自分のレベルの低さを痛感させられました。秋までに自分のレベルをとことん上げて、キャリアハイを出せるように頑張ります」

 プロを目指す意志に揺らぎはない。もちろん、数字はドラフト候補の力量を測る大事な材料になる。それでも、田中の類まれなポテンシャルは、プレーを見た者なら誰しも感じとれるはずなのだ。

 近い将来、この怪素材が収まる鳥カゴの扉が開き、大空を羽ばたく日がやってくる。そんな気がしてならない。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

フォトギャラリーを見る

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る