埋もれていた二刀流の超逸材 太成学院大・田中大聖は「バリバリの孤独」でも最速153キロで俊足強打 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

「地方大学の2部リーグだろうと、やるのは自分ですから。結果が出るか出ないかは自分次第ですし、強豪大学の選手や社会人の選手と比べても『負けてない』と感じます。この環境だから楽しく練習を続けられましたし、レベルが上がったと感じています」

【無残な結果に終わった春のリーグ戦】

 今でこそ「二刀流」として密かに話題になりつつある田中だが、おそらく今後は野手としての評価が高まるはずだ。

 昨年までは故障歴のある右ヒジを考慮して一塁手をメインポジションにしていたが、今季から外野守備を解禁。取材日も人工芝のグラウンドで遠投をこなし、約80メートルの距離でも重力に逆らうようなボールを軽々と投げていた。

 走っては光電管による測定で50メートル走6秒00の快足もある。大谷翔平(エンゼルス)を彷彿とさせる下半身のアクションを抑えたノーステップ打法から放つ打球も強烈で、野手としての総合力は高い。

 とはいえ、「2部リーグのためハイレベルな投手と対戦していない」という指摘も当然あるだろう。田中はそんな見方があることを承知したうえで、こんな考えを述べた。

「周りのレベルが低いから無理やろと言われますが、スピードは慣れみたいなものなので。それ以上に大学生の素材として、力強いスイングができるとか、強いボールが投げられるといった部分を評価してもらったほうがいいのかなと」

 田中の名前がドラフト候補としてメディアに登場するケースが増え、高校時代の恩師や仲間たちから「本当におまえなのか?」「何があったんや?」といった反響が続出しているという。

 だが、田中は「自分はまだまだ」と現実を見つめ、「支配下でプロに入る」という目標をかなえるために努力を続けている。

 田中の意識の高さは、練習前のウォーミングアップを見ればすぐにわかる。マットを敷いてストレッチや体幹トレーニングに、約1時間もみっちりと時間をかける。それは体を温めるという次元ではなく、自分の体と対話し、メンテナンスしているようだ。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る