三重・白山高校を甲子園へと導いた指揮官が全寮制の公立校へ 新たな「下剋上」への挑戦

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 夜は酒も遊びも断ち、空き時間のすべてを教員採用試験の勉強に費やした。東さんは「昴学園での1年間があったから、今の自分があります」と語る。

 コーチとして当時の野球部も指導した。部員数が少なく、力量的にも乏しいチームだったが、東さんはお構いなしに選手たちを鍛え上げた。同年夏の三重大会で1勝を挙げると、選手も保護者も大盛り上がり。昴学園はそれ以来、夏の大会で勝利を収められずにいる。白山が夏の連敗をストップさせた2017年の夏など、昴学園は初戦で0対29のスコアで大敗している。

【新たな下剋上物語がスタート】

 とはいえ、東さんが転任する前から昴学園の野球部は上昇機運にある。現任の高橋賢監督は、東さんの初任校である上野高時代の教え子でキャプテンだった。高橋監督の地道な活動もあり、現在は新3年生こそ2人ながら、新2年生は15人。新1年生は20人が入部予定だという。1年生は全生徒の4人に1人が野球部員という計算になる。

 公立高校ではあるものの、昴学園は全寮制のメリットを生かして県外からの生徒も募集している。少子高齢化が進む近年は、地方自治体が生き残りをかけて公立高校で越境入学生を募集する流れが加速している。東さんが赴任したことで、有望な選手が昴学園を選ぶようになる可能性もあるだろう。

 東さんが赴任する前日の4月2日、春季南地区予選で勝利した昴学園は県大会への出場を決めた。昴学園にとって県大会出場は開校以来初のこと。スタンドで勝利を見守った東さんは、なつかしい感覚を覚えた。

「保護者だけじゃなく、町長や地元の人まで、まるで優勝を決めたような騒ぎでいいなぁと思いましたよ。白山の初めて県大会に出た時のことを思い出しました」

 三重高、津田学園、海星、菰野、いなべ総合、津商。三重県内には甲子園を狙う強豪がひしめいている。白山で実績を挙げた東さんが赴任したといっても、昴学園が甲子園にたどり着くには険しい道が待っている。

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